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「バラ狩り」

 天気のよい日が多かったゴールデンウィークは、仕事三昧の中であっという間に終わった。ゴールデンウィーク前に85ミリの雨が降ったが、1週間後に63ミリ、そしてゴールデンウィークが終わると二日間で120ミリの雨量を記録した。3週連続で大雨だ。そしてなんだか肌寒い。今日は風が強めに吹いて、早くも乾燥を感じる気候だ。何とも名状し難い天気である。

 ナスやピーマンなどの植え付けが遅れている。春先の寒さで苗の成長速度が遅かったせいもあるが、作業がなかなか追いつかないことが最大の原因である。葉物類の植え付けは順調に進んでいる。昨日の晩も、さて葉物を植え付けしよう、と思ったのだが、植え付けする畑の横にバラの木が繁殖し始めているのを見つけて、急遽予定を変更した。青しそ畑の草取りをしていた連れ合いと二人で、バラの木狩りである(「刈り」が正しいかもしれないが風情は「狩り」なので)。

 僕たちのいうところの通称「バラ」は、ノイバラである。野ばらとも言うが、野ばらと言ったら「わらべはみたり、のなかのばら」とシューベルトの曲を思い出してしまって、なんだか違う雰囲気である。親父が生きていた頃、バラを目の敵にしていて、その頃から「バラ」というとたちの悪い厄介なもの、という印象である。実際に、繁殖しだしたバラはたちが悪い。たちが悪いというのは、人間が管理する場所において、トゲだらけのバラは扱いに困る、という意味である。トゲが茎全体に満ちているので、バラの茎を切ったとしても、トゲとトゲの間を慎重に指で持たないと運ぶことすら困難だ。軍手なんてしていようものなら、トゲとトゲの間を持っても軍手にトゲがくっついてしまう。厄介この上ない。

 僕の経験では、バラは人間の手が届かなくなると繁殖する。半日陰を好むし、雑木と雑木の中で勢力をいつの間にか拡大する。蔓性のものと共存する知恵を持つ。逆に考えれば、いつも草を刈り、雑木を除去しているような火の当たるところに、バラは繁殖しないのである。収穫や出荷に追われて草刈りをせずに放置すると、バラにとっては天国ということになるのだ。

 昨日は、二人で一気にバラを片付けた。雑木が大木化したその下で、半径3メートルくらいで繁茂したバラは、白い花をたくさんつけていた。バラの幹自体は、トゲがあるだけで大した強度はない。ハサミとのこぎりだけで1時間ほどかけて根こそぎ切り落として、バラの山を作った。後日、バラの根っこを掘り起こせば完璧だろう。おかげで葉ものの植え付け予定地は、日当たりも良くなり広々とした印象に変わった。あとは、同じく茂りだした笹竹と雑木を切って草刈りをしておけばいい。去年は、一度もやらなかったのだと思う。忙しくても、やるべきことはやらないといけないね。

 バラを狩るなんて大袈裟、だと思うかもしれないが、これは一つの大仕事である。かなり困難を極める仕事でもある。都会の人なら、一種のスリリングな探検のような感覚で挑戦したいと思う人もいるかも知れない。なんて思うくらい特殊な行いではある。蜂の巣を退治するような感覚と似ているだろうか?足の怪我がようやく治りかけてきた長男とのサッカーをしないでよかったことも、このバラ狩りの時間を作り出せた要因の一つである。

2018年5月10日 寺田潤史


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