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「また新たな災害の時代へ その2」

 強い風が吹いている。今週の台風は21号として、遠く小笠原諸島あたりを通過した。それでも風が吹く。昨夜20時半頃に風速16メートルを記録したが、吹き荒れている印象なので、落ち着かない夜だった。今朝までの雨の量は10ミリ程度と、予想よりも少なかった。二日前に48ミリもの雨が降った。台風19号以来、畑は湿ったままである。今しがた正午になって、風速20メートルを記録したようだ。遠く離れても、台風は台風である。千葉県の鴨川では、正午までの8時間に200ミリもの雨が降っている。

 あまり報道されていないが、このすぐ近くの遠州灘海岸では、先の台風19号の影響で、海岸線の300メートルほどを削り取られている。砂浜を浸食し、旧来の堤防も消失している部分もある。僕の兄がドローン撮影したものを見せてもらって、初めて僕たちも事実を知った。ちなみに、2歳上の僕の兄は、航空宇宙学を学んでおり、ラジコン飛行機の設計や製造、販売の経験もある。ラジコン飛行機を飛ばすほうでは、世界大会まで2回経験しているくらいなので、ドローン撮影など玄人はだしだ。

 2011年の津波被害に学んで、こちらでも遠州灘の防波堤を高く強固なものに作り変える工事が始まっている。隣の政令指定都市では、大きな企業の巨額の資金提供によって、防波堤工事は全体の9割までが完成している。こちらの堤防工事はまだまだであるが、今回の海岸線の浸食被害にもびくともしないことが見て取れる。津波対策で早急な工事が望まれてきたが、台風の高潮対策としても効果を発揮できそうなので、さらに性急な工事を近くの自治会は求めている。いつ来るともわからない地震、津波対策だけではなくなっていることも、新しい時代を予感させる出来事だ。

 他山の石という言葉があるが、日本中で自然災害や自然災害から派生した人災を、他人事ではないと感じている人が多い。海辺に行けばよい、山に住めばよい、なんていう単純な発想だけでは生きていけないのだ。生きるためには逃げなければ、ということも正解だが、準備もまた重要であることが、人々の胸に切実に刻まれ始めているのだろう。八ッ場ダムのように反対運動の歴史と変遷、治水効果の有無などの議論へと進み始めていることは、様々な観点から治水を見直すきっかけになるだろう。今までの、旧態然とした、経済的な利害関係や反対運動のような形とは違った、治水に特化した自分たちが生き延びていくための議論が必要だ。

 この頃の科学技術の発展は、本当に目を見張るものがある。日々の生活の中で、それらを実感している。それとともに、それらの一つ一つを理解することに、相当な時間も必要だ。仕事の合間に、ちょこちょこっと理解する、なんてできなくなってきた。仕事の手を止めて、理解することに集中することが必要なのだ。災害は、仕事を止める。人間が生き延びることに集中しなければいけないからだ。本来、動物であるヒトが、種の保存だけでなく、未知のものを知りたい、作り出したいという知恵欲を得て、安定安住の中で、生き延びる力を試されているのかもしれない。政治ごっこをしている場合じゃないよ。

2019年10月25日


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