ようやく秋らしい日々がやってきた。雨で湿った土を乾かす日々である。もう少し乾いてくれないと、トラクターで畑を耕すことはできない。乾くまでの間にやるべきことはたくさんあるから、一つ一つを確実にこなしていく。雑木や笹などで日陰になった畑に、少しでも陽の差す時間が長くなるようにと、電動バリカンで刈り込んむ。草刈り機を修繕し、草刈りを進める。ホースの穴を修繕する。ついでに飼い犬の犬小屋も修繕する。

　今年は修繕するもの、買い換えるものが多発した。去年の秋の台風の塩害の影響が、撹拌機の三相モーターを買い替えに追い込んだのは春先だった。電線が切れたのは夏。家電製品や水回りなど、もう全てを覚えていないくらいだ。極端な経年劣化が主な原因であった。草刈り機は、燃料フィルターと燃料チューブの部品の買い替えで済んだので、千円程度で収まった。数万円の修理費用や買い替え費用がいくつかあった。そういう年なのか？

　一昨日の夜、納屋で種播きの準備をしはじめた。アレンジ中の曲を流しながら、と思い、パソコンを立ち上げ、ミキサーやアンプの電源を入れた。曲を再生したが、音が出ない。あれ？アンプの電源入れたよな？と独り言をつぶやいて、もう一度アンプの電源を押した。その瞬間、火花が少し散ったかプシューという音がしたか覚えていないが、白い煙が出た。ありゃーっ、やられたか！焦げ臭い匂いが漂う。危ないので、アンプの電源ケーブルをはずし、アンプ自体もネジを回してカバーを外した。ヒューズはやられている。それだけではないよな？予想外の展開がまたしてもやってきた。そういう年なのか？

　このアンプ、昔のもので実に重い。持ち運ぶだけで腰をやられそうなものだ。オーディオマニアのＴにもらったのは、１５年以上前のこと。そのＴは、去年あっけなく突然他界した。だから、いわば形見のような印象のアンプである。確かに、１０年ほど前から、電源の入り方は微妙な感じがあった。だが、普通に使えていた。音楽制作のモニターに使うなら、と別のデジタルアンプをＴは僕に売りつけた。しばらくは両方とも使っていたのだが、デジタルアンプの片側が一度壊れたときに、修理に出して、それ以来使っていなかった。そんな経緯がある。

　この重いアンプの突然の白旗は、僕に音楽をやるな、と伝えて来たのだろうか？と一晩考えさせた。しかし、そんなことで諦めるほどの情熱のなさであるわけがない。次の日、デジタルアンプを取り出して、備え付けた。そして、曲を再生させた。そうかー、そうだったのか。今までの重いアンプよりも、素直で忠実そうな音が出ている。曲のミックスの具合がよくわかるのだ。９月１０月の忙しさと台風などで、停滞したままの親父へのレクイエムは一気に進みそうな、そんな音を出してくれた。

　Ｔが僕に、早くアンプを替えるように煙を出してくれたのかな？何かが壊れる時、全く運が悪い、と思いこんでしまいがちだ。お手上げの気持ちになる。今年は何回そのような気持ちを味わったことか？しかし、人は前を向くのが気持ちいい生き物だ。どこまでも諦めないで前に進む、それを先に死んだ人たちに提示し続けよう。

2019年11月1日

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