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「長男のサッカー 秋深まりて2019」



 雨が降っている。冬になるかと北風が寒風に変わったと思うまもなく、異様に暖かい日が来て、今度は雨になった。冷たい雨かと思いきや、合羽を着て収穫してみると意外に寒くない。収穫のはずが、ついつい素手で草を抜いてしまう。そのくらい寒くないということだ。

 長男がトレセンサッカーで泊まりに行っている。同学年としてはレベルの高いトレセンで、小学6年生の国際大会以来の顔なじみの薄い選手たちとの宿泊だ。来月は自チームでの海外遠征も予定されていて、スーツケースを初めて使用している。僕の経験したことのないことを、長男は次々と経験している。時代が違う、と言ってしまえば腑に落ちるわけでもないけれど…

 その試合を見てきた。出荷を早々に切り上げ、片道2時間の道程。地域の対抗戦で、長男は後半から半分だけ出場した。事故渋滞が各地であったようで、試合開始は30分ほど遅れた。おかげで時間も短縮され、たった15分のために2時間往復。溜息が出そうだけれど、この目で見なければわからないことは山程見ることができた。見ると見ないとでは大違いである。

 長男の出来は、とてもじゃないが良いとは言えない。チームでのポジションでは出場できなかったし、初体験としてはあんなものかもしれない。8割方の選手はどんどん蹴ってくるし、ドカンと大きくハズレたシュートも沢山あった。「打って終われ」という選手の掛け声も多く聞かれたが、遠目からシュートをドカンと打ってトレセンの意味あるのかいな?とは思う。自チームでのパス回しから「打って終われ」という意味とは大きく違うなぁ、と感じた。ロングキックやボールを繋げるのに繋がないサッカーに終止すると、正直言ってつまらない。逆に、普段の自チームでのコーチに長男は恵まれている、ということを改めて感じた次第だ。

 ただ、別の味方もしている。ユーティリティ性を必要とされることの多い日本のサッカーでの成長を考えると、不慣れなポジションをやらされることにも意味があるのだろう。まだまだカラダの小さな長男が、身長差30cm以上の選手を相手にするには、いつものポジションなら通用するかもしれない。他のポジションに終始するのなら、カラダの成長を待たないとアピールはできそうもない。どちらにしても時間のかかる話である。

 まあ、今までもそのような経験を積んできている。俺が俺がでドリブルをして相手に取られ、やたらとシュートを打って外す、そんな子どもたちの中にあって、いつも長男は時間をかけてアピールしてきた。U17代表のようなサッカーの流れなら、長男の傾向の選手が必要になるだろう。そこまで行くかどうかは別として、ボールを繋いで判断や切り替えの早いサッカーは見ていて面白いものである。

 話は逸れるが、僕たちの農の世界で、熱心な若者がいたとして、僕たちが見るのはやはりその若者の継続性と独自性なのである。3年の熱意よりも、10年単位の継続を見る。これは時代が変わっても変わらない見方だろう。熱意の継続、独自性の追求、これはある意味で至難の業である、と思いながら子供のサッカーを見守っている。そして、子供の時間をかけた対応力や成長をこの目で見ること、それはなんと幸せなこと。

 

2019年11月22日


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