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「人とスペースと自分の持って行き方 その5 政治と学問」



 菅総理大臣が誕生する前から、たぬきがたぬきを担いで勝ち馬に乗った、と書いた。自民党の気概のなさは、戦前のやり方への回帰だろうか?戦争というものを、僕たちが生まれる前に体験した政治家たちは、戦争は懲り懲りだという最低限の気概があった。そこから考えを広めていけば、自ずとかけ離れた発想はないものであったが、今は勝ち馬に乗るということだけを踏襲してしまっている印象がある。

 学術会議の推薦メンバーを任命拒否するという、理由を言えない暴挙に出たが、安倍元総理の一番悪いところを受け継いだことが新しい総理選びの焦点だったのだろうか?自民党の中にも複数人程度は異論を表明しているようだが、重鎮系からは異論の言葉は今のところない。簡単に言えば、軍事と科学を根幹において貧困な財政の対策としたい、ということだろう。全く冗談じゃないよ、という世界である。

 学者が学問を追求すること、これは好きなことをやる、という気持ちの顕れだろう。それを長年継続するのである。妙な邪心があっては研究を続けられるものではない。研究が軍事産業に使われることを嫌う学者が多いのも、研究が紙一重の性質を持つことが多いからだろう。あの平和主義者のアインシュタインでさえ、ドイツの暴挙を案じてアメリカに同意してしまったようだが、そのようなことは容易に想像できるのが学者だろう。

 考えてみれば、想像力を持たないのが政治家たるものかもしれない。だが、現場を知ることと学問の両立を図るのが政治家でなければいけないはずだ。想像力を持たない政治家が、今までは気概というもので政治を行ってきたのかもしれない。前例を踏襲するという気概の元に、戦争という体験があったのかもしれない。そして、今、前例を踏襲しない、という掛け声は新しそうに聞こえるのかもしれないが、理由を示さない限りそれは単なる暴挙である。

 共謀罪に反対してきた6人を日本学術会議の推薦メンバーから外したことは、日本学術会議の「軍事目的の科学研究は行わない」という立場に政治介入するようなものであろう。ここをもっとハッキリ発言する必要がある。また、そのような経緯に至った自民党の「勝ち馬に乗る」的な手法は、日本人の悪い癖であるかもしれない。それを変えていくべきだと思う。学校で、勝ち馬に乗りなさい、という教育はまさかしないだろう。でも実際には、勝ち馬と言うべき大企業に就職したい人が多くいるのも事実である。学校の勉強の勝ち馬的な人の一部は官僚になったが、その官僚を官邸主導になびかせようとしているのが現状なのだ。本来、官僚にだって学校の勉強を極めてきた気概というものがあるはずなのだが、気概というものすら法律で無い物にしてしまおうというのだろうか?

 政治というものと距離をとってきた僕も、今回の暴挙にはいささか黙っていられなかった。まさかそこまではしないだろう、という政治家の気概を少しく信じていたのだが、何でもありの時代に突入してしまったきっかけはやはり安倍政権にあったのかもしれない。その土壌を作ってしまったのは僕たち民衆だ。変えていかなければ。

2020年10月16日


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