東京の三女から「マスクがない。あと数枚。買いたくてもどこにも売っていない」とメッセージが入る。近所のドラッグストアには相変わらずマスクはない。この頃の僕たちは風邪もひかないし、あまりマスクをしないけれど、四女は高校へマスクをして通う。だから少しの在庫は残して置かなければいけない。朝の出荷の帰りに、街のドラッグストアに寄ってみた。

　「マスクはやっぱりありませんか？」と店員に聞くと、「レジの横にありますよ」との返事。行ってみると、１０枚入のマスクがあり、ポップにお一人様一つ限りと書かれていた。あー、１０枚かー！と心でつぶやいて、ないよりもマシだと思い返した。その日のうちに、買った１０枚入と家の在庫の中から２０枚のマスクを袋に詰め込んで、郵便で三女宛てに送った。マスクとはわからないように、マスクの袋を厚紙で挟んで封筒に入れる念の入れ用は、無事に三女のもとに着くように、との願いである。

　国内での新型コロナウィルス感染の事例が表に出はじめた。政治家などの楽観論者の期待は、簡単に裏切られたと言っていいだろう。中国での情報公開が当初から進めば、早いメカニズムの解明となったかもしれない。ここに現在の中国の体制と諸外国の体制の相容れない曖昧さが存在し、曖昧さを経済でごまかしてきたツケを払うことになる要因がある。医療で国と国の境目をなくすことが必要だが、行き着くところは中国人の中国人自身の手による変革となるだろうか。いびつさがいびつさのまま巨大になっていく様を、多くの中国人は本当に居心地が良いと思っているのだろうか？対岸の火事どころではなくなってきた日本に住む僕たちは、マスクで荒稼ぎなどという体たらくを演じていては、目くそ鼻くそを笑うの類となる。

　こういう大事と並行して、僕たちは日常の雑事に追われている。四女が犬の散歩に出掛け、戻って来たと思ったら、連れ合いが「大変だ」と駆け込んできた。何事かと思えば、犬のムーンがおてんばして、四女にじゃれてきたときに、四女のポケットからiPhoneが転げ落ちて液晶画面が割れてしまったという。この頃の子は、iPhoneがないと生活できない、というくらいにスマートフォンに依存している。そのiPhoneが使えなくなったことが一大事なのである。

　こういう大事と並行して、僕たちは日常の雑事に追われている。四女が犬の散歩に出掛け、戻って来たと思ったら、連れ合いが「大変だ」と駆け込んできた。何事かと思えば、犬のムーンがおてんばして、四女にじゃれてきたときに、四女のポケットからiPhoneが転げ落ちて液晶画面が割れてしまったという。この頃の子は、iPhoneがないと生活できない、というくらいにスマートフォンに依存している。そのiPhoneが使えなくなったことが一大事なのである。

　端末保証もキャリアによって仕組みが異なる。結局、保証は使わないで、知り合いの修理屋さんへ出向いて修理してもらった。四女のiPhoneは三女のお古を使っていて、iPhone6sである。もうそろそろ新しいものにとも思ったが、もう少し使おうという結論に至った。ついでにバッテリーも交換してもらって、四女は満足げである。iPhoneなしの生活を極力避けた形であるが、そのために僕はかなり時間を費やした。一体何をやっているのだろう？という気持ちが僕の周りを覆っていた。このような生活でいいのだろうか？

　一見して快適そうな現代の暮らしぶり。快適な日々を送るために生きているのだろうか？畑で苗を植え、収穫し、樹を切り、薪を燃やすというような味わい深い行為は、快適な暮らしとはかけ離れたものなのだろうか？車での野菜の納品途中に見える景色、新しい家、新しい車など、何かに急かされているような錯覚に陥りそうだ。

2020年2月14日

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