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「60歳」



 まもなく60歳になる。還暦という言葉を聞くと、余計に年寄り臭く感じて嫌なものだが、日本人らしく暦の中に生きている者にとっては、節目ということになるだろう。還暦の年にコロナウィルスが世界を震撼させた、という記憶しやすいという意味でも節目の年になる。この今年に24歳になった同じ子(ね)年生まれの長女が、ドイツの大学院に合格した、ということも記憶に留めやすい。まさか自分の子供がドイツでホルンを吹くなんて、10年前には想像もできなかったことが起きる。これをご褒美というのかもしれないね。

 毎朝でもないが、仏の間で祈ること、その中に新型コロナウィルスから家族や親戚一同をお守りください、という一文が必ず入ることになった。これは僕の単なる本音であり、そこに他意はない。さらにその前には、猿田彦さんを祀った左側の祭壇を、勝手に八咫烏系ということでサッカーの神様として二礼二拍手して、サッカー界をコロナウィルスからお守りください、という一文を加えている。ちなみにこの祭壇は、僕の祖母が他界してから部屋の掃除をして、押入れから出てきた立派なものである。

 そして、仏さんの右側には、饒速日(ニギハヤヒ)さん即ち大国さんを祀ってある。こちらは柏手を一回プラス四回の計五回打って「ターカーマノーハラー、ナモーターカーマノーハラー」と繰り返してから拝む祭壇がある。阪神大震災のあった日の二日前に、奈良の大倭紫陽花邑に今は亡き矢追日聖さんを訪ねてから、このスタイルを続けている。「ター」が父さんの意、「カー」が母さんの意で、お腹に子供が宿る、それがこの世の仕組みであると理解している。それは自然界でも同じで、大地に種を宿して、芽が出て成長する仕組みだ。

 ただ、僕が毎日イメージしながら口にするのは、「大陸からやってきた素戔嗚命(スサノオノミコト)と奈良の奇稲田姫(クシイナダヒメ)が結ばれて、饒速日さんが生まれました。これが日本の源です」ということ。これは誰に強要されたものでもなく、誰に強要するものでもない、僕個人の祈り方だ。真実を継承すること、ということからいろいろな想念が出てくるけれど、素直に生きることは本当に難しいとも思いながら祈る。だから、せめて自分の子供には素直さをできるだけ発揮させてあげたいな、とも思うわけだ。

 この年でも、ギターも弾いているし、曲作りへの意欲もある。しかし、時間がない。コロナウィルスで、野菜の仕事にそんなに大きな影響があったわけでもないが、出荷は順調で、植え付けは遅れている。先週末に中晩生玉葱の収穫は終えることができたが、今週末の晩生玉葱の収穫は延期せざるをえない。長男のサッカーの練習相手でカラダは疲弊してしまったのだ。

 ようやく身長153cmほどまで伸びてきた長男は、鈍足だった足も50mを7秒3まで来た。もう少し伸びれば7秒は切れるだろうし、そこは予想通りだ。ただ、僕がその相手をするとなると、もうどうしようもなく疲れが取れなくなってくる。いまだに奴は僕に勝つことを目標として、シュートを打つし、1対1も仕掛けてくる。これって、60歳のやることか?今夜はとうとう、練習相手を休むことにした。ああ、60歳。

 

2020年5月29日


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