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「生きているだけでラッキー2022 その4」



 台風はやっぱり台風であった。台風8号がこのすぐ南の海を通過した時、僕たちはまだ高速道路の上だった、と思う。その後、台風は御前崎をかすめて、駿河湾から伊豆半島に上陸した。勢力は予想通り大きくなく、雨台風の様相だった。

 13日、僕たちは、朝から、長男のサッカーの試合を見に出かけた。台風が直撃状態に近い進路であることがわかっていたが、岐阜県まで高速道路で出掛けたのだった。1週間前に、東京の娘たちを訪ねて東へ高速道路を走らせたばかりだ。今度は西へ走ったが、予選のグループリーグで、6月に岐阜県に行っているので、慣れない道ではなかった。今回は、国体の地域での1位決定戦だったので、お盆であっても台風であっても試合がある限りは車を走らせるつもりだったのだ。

 生きているだけでラッキー、という気持ちは、逆に、今だけしか見ることのできない長男のサッカーを、何が何でも見に出かける、という強い気持ちにもさせる。サッカー選手になることができなければ、あと数年で試合を見ることはなくなるだろう。運良くサッカー選手になったところで、あと10数年がいいところだろう。プロスポーツ選手を目指す、なんていう環境を考えたこともなかった僕たちである。増して、僕の好きなサッカーである。

 国体とは言え、高校生のサッカーであり、予選であればなおさら、競技時間が短い。ユースリーグは45分ハーフだが、今回は35分ハーフである。たった数ヶ月前には、35分ハーフが当たり前で、40分、45分ハーフなんてできるのかいな?と思っていたのに、今では、35分がとても短く感じるのだ。そして、いつもフル出場できるとは限らないし、自分の子供が出場できないで岐阜県まで保護者が見に来るということもザラにあるのだ。

 国体の少年サッカーは、16歳以下というくくりがあるので、高校1年生が大半で、早生まれの2年生が一握りという年齢構成だ。4月の終わりからメンバー入りした長男は、いつの間にかスターティングメンバーに入るようになった。ユースチームでは、2年生3年生が多いし、中盤の右というポジションを与えられて、ライバルが多い。国体のチームでは、中盤の左が主戦場であったのだが、今回は右だった。ボランチが不在の時は、ボランチでフル出場という試合もあった。今回は70分中、60分くらいの出場だった。1点差でかろうじて勝利したが、本人も親も不本意な気持ちは隠せない。

 試合が終わって、すぐに僕たちは車で引き換えした。長男はチームと一緒にバスで帰ってくるのだ。台風が気になることは当たり前である。家に着くと、風でいろいろなものが飛ばされている。オクラの実に少し傷が付いているし、モロヘイヤの樹は大きく右に左に倒れかけていた。どんなに勢力の弱い台風でも、やはり近くまで来れば風の影響が出る。幸い、潮風が吹かなかったので、野菜が完全に駄目になることがなくてよかった。これもまた、ラッキーなのである。何度も台風の直撃を経験しているので、どうなったって諦めるということはない。台風には、粘り強さを教えてもらっているようなものなのだ。

2022年8月19日


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