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先の日曜日、NHKの進化論という番組で、微生物のことを取り上げていたので、思わず見てしまった。その中でジョンズ・ホプキンス大学のシビン・ジョウという人が、微生物をがん治療に取り入れようとしている、ということを伝えていた。土壌中に存在する嫌気性の微生物であるクロストリジウム・ノヴィーという菌が、土壌の脂肪分を餌として増殖していて、それを血液に投与することで、がん細胞だけを餌として取り込んでいくという形で治療できるのではないか、と伝えていた。
僕が注目したのは、土壌中に存在する菌であるということだ。そのような菌が一部として土壌中に存在するならば、土壌の中というものは信じられないほどにたくさんの菌が増殖や突然変異を繰り返しているだろう、と想像できる。うちの畑のような化学肥料や農薬に汚染されていない畑の土ならば、なおさら微生物の宝庫であるということを示唆しているのではないか?
クロストリジウム・ノヴィーという菌は嫌気性で酸素を嫌う。人の血液は酸素が豊富なので生存できないのではないかと思うが、番組ではクロストリジウム・ノヴィーが硬いものでしっかりと閉ざされて、がん細胞にたどり着くと殻を脱いで増殖するというのである。そのことは、僕たちの畑の疑問をいっきに解き放つような例になるのではないか?と僕は考えた。
そこでインターネットで少し調べてみた。九州大学大学院農学研究院教授の平舘俊太郎という方が、イネ科植物の「根から分泌される有機酸と土壌の相互作用」という考察の中で次のように書いている。「植物はいったん土壌に根を降ろしてしまえば、そこがその植物にとって好適環境であるか否かにかかわらず、一生その場で生活することを強いられるのが普通である。しかし、ある種の植物は、単にその環境中で耐え忍んで生きているばかりではなく、根から分泌物を積極的に土壌中へと放出し、それによって不良環境を克服するよう働きかけていることが明らかになってきた」と。そこを少し拡大解釈してみると、植物が種から芽を出して最終的には結実して子孫を残そうとする過程において、自らがその固定された環境を自分自身の根と微生物の関係において好適なものに変えていくことができるということにならないか?
そこで、小松菜などを育てている僕たちの、長年の観察を振り返る。僕たちは、できる限りだが、堆肥を土の中に鋤き込まないで土の表面に置くだけのやり方を取っている。それは、必須であろう硝酸態窒素を多量に吸収しないことにもなると思うので、小松菜はある程度の大きさになると葉先から色を失っていく。そのことで虫を自発的に呼びやすくし、虫の糞などを栄養素として吸収する、という楽しい推論ができる。なぜなら虫は葉をすべて食害することはないからである。そこのバランスは不明だけれど、いつか誰かが研究してくれないかな?
僕の推論は、植物が土壌に長く生育すればするほどに劣化するのではなく、微生物の宝庫の中にいるのではないか?ということ。そしてたとえ畑を耕したとしても、嫌気性菌は殻を閉じてまた嫌気状態になるのを待つのでは?僕たちは30年も虫食いの野菜だけを食べて生きている。農家は微生物に生かされている、それを感じる1年に!
2023年1月13日