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「清濁併せ呑む、とはどういうことか?」




「清濁併せ呑む、とはどういうことか?」



 2006年の5月10日に、「清濁併せ呑んで」という唄の歌詞を書いた。17年前だ。

「闇夜に 光る窓が 動いている 娘を乗せた 列車が 走り去る
あちらの世界を目指す おまえ こちらの世界を 覚えておいて
彼を乗せた車は 蛇行して 海の朝や 古代を 彷徨った
あちらの世界に媚びるには若く こちらの世界を築き上げた


オリエンタルもヨーロピアンも ジャパネスクもいいけれど
おまえのその歩いている足元に 咲いている花は どこから来たのだろう?
1.0も2.0も 携帯電話もいいけれど
おまえのその瞳の隅に隠れている 抑えきれない視線が みどりに揺れている


闇夜に光る窓を動かした 約束されたものは 破られた
あちらの世界の 強がる思いは こちらの世界の においを嗅いだ?
罪を犯した過去が 蛇行して 怒りの夜を貫いたとしても
あちらの世界は 今も変わらず こちらの世界から まぶしくみえる


気に入らない 常識知らない 罵り合って 黙秘権
おまえのその歩いている足が踏む 草の根は深く どんなに強いだろう?
嵐の夜も 日照りの午後も 凍える指も見てきただろう?
彼を乗せた車は こちらの世界へと戻る    清濁併せ呑んで 清濁併せ呑んで」

 この歌詞を書いたテキストデータの最後には、次のようなことを記していた。「…歌の背景はフィクションではあるけれど、生き血を絞るように思いを込めました。清濁表裏一体であるこの世の道理は、片方の側からの論点や、現場を知らない人の横暴によってかなり偏りを感じますし、ゆがめられています。そのことのひずみが世の中の随所に出ていると感じます。こどもたちが大人になって巣立つまでの時間に、生活の中のことであるとか現場で見たこと触ったことなどの大きさをからだに刻んでほしいと願います。そうして、見知らぬ世界に旅立っても、肌で感じたことを土台にして受け止めてほしいと思うのです」と。その時、45歳だ。

 あの時にホーンセクションなどの音を加えてロック色の強い作品となったこの曲を、2023年になって、弾き語りでやってみるというトライをしている。17年経っても、心情的にはそんなに変化していないな、と自分自身に問いながら、しかし、ギターも少しはましになったかもしれないし、下手な唄も少しは?…。この歌詞を書いた数日後に長男が生まれている。その長男も、今、貴重な経験をカラダに染み込ませている。誰にも期待せずに、自分で本当に思ったことを行動にして、辛いことをひっくり返すのだよ。

2023年3月31日


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