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「清濁併せ呑む、とはどういうことか? その3」



 人に生きる意味を求める、それが人間というものなのかな?楽しければいいではないか?と言う人もいるかもしれない。しかし、現実には苦しんでいる人が山ほどいる。虐げられた人々が、やむにやまれず楽しい歌を唄って、その場をやり過ごす、ということも少なくない。自分が殺されてしまったら、物を言うことができないかもしれないが、家族が殺されてしまったなら、筆舌に尽くしがたい言葉を発するだろう。

 僕の好きな歌手の一人に、ビリー・ホリデイという人がいる。彼女の唄った歌の一つに「Strange Fruit」という作品がある。日本では「奇妙な果実」と直訳されている。その歌詞。

Southern trees bear strange fruit,
Blood on the leaves and blood at the root,
Black bodies swinging in the southern breeze,
Strange fruit hanging from the poplar trees
Pastoral scene of the gallant south,
The bulging eyes and the twisted mouth,
Scent of magnolias, sweet and fresh,
Then the sudden smell of burning flesh.
Here is fruit for the crows to pluck,
For the rain to gather, for the wind to suck,
For the sun to rot, for the trees to drop,
Here is a strange and bitter crop.

 これは彼女の作ったものではないけれど、彼女が唄ったことのその態度に仰天させられる。唯一無二の歌手の唯一無二の作品だろう。差別や悪い慣習が横行していた時代、と遠い目をしてはいけない。それらは常に自分の中にも存在する。それらを容認してきた人々が常に存在するし、大義名分のもとに今も同じようなことは起こっている。自分一人ではどうにもできないこと、自分の非力さ、それらのことが「清濁併せ呑む」といういうことではないか?

 未来にどうすべきか?その時にはどうにもならなかったこと、ということが生きていると必ずやってくるし、知らなかったことも知るようになる。どうしようもないけれど、せめて最善を尽くす。それでも事態は変わらない。そのことを持ち越すこと、せめて自分の子供には、その加害者側にならないように、との願いを込めて育てたり…。全ては日々の積み重ねにあると思う。奇妙でもいいから、自分が自分であることを積み重ねる。

 この頃は、カラスとも友だちになれそうな気がしている。納屋の傷んだ軒先を突くカラスには、軒先を修繕することで敵視せず、おお元気か?と畑の水たまりで水を飲むカラスに声を掛ける。畑のシートをうまいことめくって虫を食べるカラスに、「やるなぁ、ひょっとして僕や連れ合いの真似をしているのかいな?」と合点したり… 。

2023年4月14日


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