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「秋は佳境に その3」

 気がつけば11月。恐ろしいほどの駆け足で時間が過ぎていく。ゆっくり生きようと思っても、やりたいことが多すぎるからいけない。そのやりたいことが、狭くない畑のあちこちに点在し、あるいは樹木や納屋周辺に偏在しているのである。ゆっくり考えることができるのは、苗の植え付け作業や、生分解マルチフィルム貼りなど鍬を使っての作業時などである。

 高校の同窓会紙というものがあって、卒業生の今を書くコーナーに執筆を依頼されて書いたのだけれど、それを読んだ同級生からメッセージが来た。小学生時代からの友達の一人で、何かなければめったに会うこともないが、近くには住んでいる。小学生時代にはたくさん本を読んでいた人である。「立派なことを考えながら生活していることに驚きを感じます」とあり、うーん、僕としては、おかしな感覚だった。立派なことという、そのような概念がそもそも僕の中に存在していないから感じたのかもしれない。ただただギリギリのところで仕事をして生活して走り回っているだけで、役所や会社というシステムとはかけ離れた日々であるので、僕の考えることが世間とはかけ離れているのかもしれないね。

 植物の成長を見ることが日常である。そのことを眼にして理解しようとすると、どうしても擬人化して考える癖がついている。植物の世界を想像して、それを発展させて人間社会と比べてしまうのである。結果として、人間とは何者か?に行き着くわけだが、これは立派なこととは違うだろう。僕が立派という言葉を使うとしたら、一つのことを何年も続けている人に対して使うかもしれない。いや、そういうことではないかな?きっと彼は、日常や仕事の中で、人の中にいて人のことを気にしながら生活をしているので、考える隙間がないのだろう。

 先日には、ファーマーズマーケット納品時に、たまに出会うことがある同業の方から声をかけられた。いつであっても、納品時に出逢えば挨拶をするし、一言二言の会話をする程度の関係の同じ世代の方だ。簡単に言えば、お店の人の対応についてどう思うか?というような内容の話だった。「僕はあまり気にしないですね」と答えて会話は終わった。誰であっても、お店の人とも良い関係であることは望むだろう。しかし、お店で働いている人にはその人なりの事情があるし、雇われているならば上司との関係もあるだろうし、お店のお客様との関係もあるだろう。僕は納品業者のようなものだから、深くは考えない。あくまでも、僕たちの育てた野菜がお店のお客さんにどれだけ伝わるか?が重要だと割り切っている。

 僕は畑を歩くと、あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ、とどんどんと野菜や苗から要求を突きつけられる。いや、突きつけられる気がするだけである。野菜に対してすまないなと思うから、やることがたくさんある、とつぶやくのだ。そこは、きっとストレスにはなっていないと思う。人が人のことを気にするとストレスになるのだろう。僕は野菜のことを観察し、どうして君たちはそんなに頑張ることができるんだい?と不思議に思うから、いろいろ考えるのである。秋は駆け足で過ぎていく。僕のできることには限りがあるので、諦めも肝心かな?時間が限られていると思う時、ストレスが生まれるかな?

2023年11月3日


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