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「秋は佳境に その6」

 農業というもの、あるいは農の世界というものは、奥が深い。他の色々な分野と同様に奥が深い、ということを僕たちは学んでいるようなものだ。それは修行のようでいて、修行とは違う。ある種、硬さがないのである。これは、動物相手のように、そう、動物には人間も含まれるが、熊とか虎とかそのような襲われる危険性のあるものと面と向かわない、ということも関係してくるかもしれない。

 草や虫たちであれば、簡単にこちらが命を奪われることはないだろう。草や虫に勝つことも簡単ではないが、負けることもそう多くはないのではないか?だから、農の世界にいる限り、どんなに忙しくあっても、どこかで無意識のうちに癒やされているのだと思う。意識的に癒やされていると感じる時も少なからずあるが、無意識に癒やされていることのほうが多いのだろう。気を使う、ということが少ないか、あるいは限りなく無いに近いのかもしれない。

 それでも、人様に野菜を買っていただいているのだから、売るということに関しては様々な気を使うことになる。単価を自分で設定したり、虫が野菜の中に潜んでいないかをチェックしたり、虫食いの度合いを判別したり、とそのような気を使う程度のことであるけれど…。ちなみに、価格ということであれば、どうにも腑に落ちない点は常につきまとってきた。今、国を上げて、時給やら賃金を上げる、ということをやっているようだけれど、個人事業主である農家が賃金を上げるということになるならば、野菜の単価を上げる、ということになるのだ。そこのところを政治家が言及して具体を示すこと、それは一向に耳に入ってこない。

 そのようなお金に関することを除けば、農の世界というものは、実に良い世界である。今日は時間がないので、ここまでにするけれど、もうすぐ結婚して丸二十九年を迎えようとしていて、夫婦二人でこの世界が相変わらずに居心地がよいと感じているのだから。こんなことを思えるのも、秋が佳境に入っている、このような時期だからかもしれないね。

2023年11月24日


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