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相変わらずに『土と脂(あぶら) 微生物が回すフードシステム』を少しずつ読んでいる。専門用語や研究データなど、見慣れない用語が少なからずあるので、さらにさらに遅読だ。読む時間が一日三〇分程度で、毎日読むわけでもない。それでも、僕の畑には勇気をくれる読み物だ。僕が帰農した頃の三十五年程度の昔に読んだいろいろな本に、様々な方の実践や研究データが積み上がっているようなものである。
僕が子供の頃、僕の親父は牛を飼って牛乳を出荷し、鶏を飼って卵を出荷していた。牛のことは詳しく覚えていないのだけれど、柵に針金を貼って電気を流していたことはなんとなく覚えている。放牧できる時には放牧して、牛に草を食べさせていたということだろう。小学校から帰ってきて、家でおふくろが作った自家製アイスクリームを食べた記憶がある。その味は、まさに新鮮な牛乳の味で、黄色みがかっていた。多分その頃は、家の牛乳もたまには飲んでいたはずだけど殆ど覚えていない。今は、市販の牛乳を飲むことはない。あの当時の、ここで育った草を食べていた牛から搾った牛乳が、きっと僕のカラダには染み付いているのだと思う。
『土と脂』によれば、現在のアメリカの牛の五頭に四頭は屋内飼育だという。放牧させる労力も削減して、とうもろこしや大豆からできた飼料を与えるやり方がほとんどに近くなっているらしい。牛の第一胃というものはよくできていて、一九〇リットルもあるらしいのだが、そこで草をタンパク質などに変える働きがあるという。このような5000万年かけて進化してきた第一胃が、この100年の大企業優先の人間の悪知恵によって台無しにされようとしているわけだ。遺伝子組換え作物や除草剤耐性大豆など、すべてを人間中心に動かすのが多くの大企業と政治家がやってきたこと。大企業に楯突く政治家などが台頭できるわけもない。
社会のシステムを良くすると宣伝して、結果的には、ファイトケミカルの少ない食品だらけになり、今までになかったような病気が多発するようになった。スナック菓子を常食していては不健康になる、と皆が知っているのに、テレビのコマーシャルは面白おかしく宣伝するのである。結果的に、僕達のようなものは、外食することがほとんどなくなった。外で食べて美味しいと感じられるものが相当に少なくなったからである。
この本は、決して告発本であるわけではない。悪知恵ではなくて、人間には知恵がある。科学が進歩して、特定の大企業の宣伝が嘘であることも証明できるような時代になってきた。この時代になっても、昔のようにファイトケミカルが豊富な食べ物を育てることはできるし、科学的な根拠も明白になりつつある。まだまだわからないことも多いが、自然界はとてつもなく繊細で強力な連鎖を作り出してきたことは確かだ。人にはとても真似できないが、自然界の一員として生きることはまだ可能だと思う。
先週も書いたが、あれほどの虫だらけになった大根畑がさらに美しい大根を育てている。虫にかじられて、一層ファイトケミカルは豊富になり食味や栄養が増すなんて、なんて素敵なことだろう。そのような中に僕達のカラダは存在している。
2024年11月18日