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「もう走り出しているようなもの その2」



 走り出しているようなもの、と書いたのは本当だったようだ。僕のカラダは疲れが蓄積して、少しずつ朝が起きられないようになった。並行して、歯茎が腫れ出した。疲れが溜まると、夜寝ている間に歯を強く噛んでしまっていることがある。

 夜は、マウスピースをして寝る習慣をもう2年ほど続けている。歯茎がもうよくないので、マウスピースで圧力を分散させる方法だ。今までも疲れが溜まって、左上の歯茎が痛みだすと治るまでに一週間以上かかることが多かった。左が痛いので、右の歯で噛むようにしていると左側の痛みが収まり、右が痛みだしてその後数日で治っていくのだ。

 大事に至ったら大変、と熱が出る前に休むことにした。水曜日の宅急便出荷を早めに済ませて、午後は床に入った。明くる日の木曜日も夕方まで休むことにして、お客さんに連絡を入れて今週は休ませていただくことにした。夕方に起き出して、熱もなく咳も喉の痛みも鼻水もほとんど出ていないことを確認した。水曜日の夜の配達を休ませていただいたので、木曜日に連れ合いに収穫を頼んで、夕方起きだした僕が仕分けをして一日遅れの配達を済ませた。

 金曜日の朝、カラダは楽になったのだが、左の歯茎が上下ともに痛むし、腫れている。かかりつけの歯医者さんに電話して理由を話し、「今から来てください」と返事を頂いた。レントゲンやら歯のCTまで撮ってくれて、状況を説明してもらった。何と、左下の歯茎に隠れた親知らずの腫れが原因だという。つまり、疲れから免疫力が低下して、菌が親知らずに入って腫れ出したというわけである(歯茎の圧力で親知らずが腫れることもあるそうだが)。親知らずが左下に隠れていたことすら、もう忘れていたくらいである。

 左上の奥から二番目の歯はすでに抜けていて、奥から三番目の歯の支柱が折れている、ということだった。それには理由がある。僕が東京時代の二〇代の数年間、今はもう他界したY叔父さんのやっていた千葉県市川にある歯医者に通っていた。二四時間スーパーの夜勤明けで、そのまま四谷から電車に乗って市川まで行き、歯を診てもらっていた。一九八〇年代である。インプラントの先駆けのようなY叔父さんに、僕は徹底的に治療を受けたのである。

 左上の数本の歯はブリッジでつながっている。そのつながった歯の最奥(左奥から二番目)の歯は生きていて、その次の歯から二〜三本くらいインプラントの軸が入っているのだ。その最奥の生きている歯がすでに抜けた状態になっているけれど、歯が繋がっているので宙に浮いた状態というわけだ。そして、インプラントも一本折れているという具合なのだ。わかりにくいけれど、自分自身への覚え書きという意味でも書いてみた。こちらは治療あるのみだ。

 歯科用インプラントという技術を、Y叔父さんに僕の歯として埋め込まれたようなものであるけれど、四〇年近く経ってみるとさすがに老朽化するのか、逆に言えば、人間の歯根というものはよくできているということにもなる。そして、飛躍して考えれば、一年中走り続けて働いたとしたら、しわ寄せは当然カラダに、さらに歯茎にも及んでくるということだろう。年齢相応にゆっくり生きろ、ということなのだろうけどね…。

2025年2月3日



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