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地這いキュウリ
地這いキュウリ


「65歳 その2」

 この一年で、身体的に変わったこと、歯の治療くらいであろうか。親知らずを一本抜き、元々ブリッジになっていた歯も撤去され、土台を作り直している場所が二箇所で数本分。この街の歯医者さんの腕が良いので、信頼して通っているわけだが、まだ半年以上はかかるのだろう。もう30年も診てもらっているわけで、その息子さんが後継者となるような雰囲気だ。この難題そうな僕の歯の治療を、息子さんが傍らでこの春からじっと視ているような毎回の治療である。

 何年か前にレーシック手術をした両目は、後発の白内障も経験してレーザー治療後、状態は落ち着いているし、よく見える。緑内障を警戒して、4ヶ月に一度の眼科検診を続けているが今のところ大丈夫そうだ。ヒアルロン酸の目薬だけを、乾燥防止に毎日数回さしている。定期的な薬は、その目薬だけである。

 コロナ禍以降、うがいをする習慣がついて、風邪も滅多にひかなくなった。働き過ぎであることは明白だが、自分でなんとか手足のマッサージをして切り抜けている。この頃は、腹筋運動もしていない。張り切って腹筋を頑張ってしまうと、かえって疲れが溜まってしまうからである。農作業は腰に来るわけだが、足のマッサージ時に、足の指先から腰の上までマッサージすることが効いているのか、しばらくぎっくり腰にも縁が無い。

 ギターを毎日弾くことで、指先も腕も使っているわけだけど、ギターが原因で筋肉痛にはならない。畑で、鍬を使う作業をすると、手の疲労を特に感じるようになった。刈払い機や自走式草刈り機を使うと、やはり腕の疲れを覚える。それらの機械が、若干故障気味であるままに作業しているという理由もあるのだが…。疲れが出たら、できるだけ素早く休息することで、この理解しがたい年齢に対処している、というところか。

 ようやく胡瓜の草取りに取り掛かることができるようになった。胡瓜の苗は、玉ねぎの収穫あとに植え付けてある。玉ねぎの収穫したあとに耕すことをしないで、そのまま苗を植え付ける、ということを何年も続けている。苗を植え付けたあとに堆肥をまた継ぎ足していく、というスタイルだ。草取りをしていると、本当にミミズがたくさんいる。耕してないので、玉ねぎ栽培時に置いた堆肥がぼろぼろになって、土が良い感じだ。草取りも、鎌で地上部との接点を刈り取っていくだけなので、土と相まって、とても心地よいのだ。

 こういうことは、年令に関係なく、帰農したばかりの頃も好きだった。野菜という目的物があることが前提なのだが、草取りと収穫の未来展望型時間の感覚と、土、堆肥、鎌による手作業、草の多様性がミックスされたような、その中での作業が心地よい、ということだろう。今日は雨のあとだったから、膝を突かなかったけれど、できれば膝をついての作業が好きだ。そういえば、今日のショッピングモール納品時に、食料品店の売り場で作業していた女性が、膝を突いて商品を並べているのを見かけた。おっ、と思った。そのように作業する人は信頼できると感じたのだ。野菜と僕の関係も、膝を突く関係でいたい。

2025年6月9日



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