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父の日のプレゼント
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「65歳 その3」

 65歳という年齢は、この数字を見るだけで重く感じてしまう。60歳あるいは還暦という言葉からは、あーそういう歳なんだ、とは感じても重みのようなものは感じなかった。年齢を意識したときにだけそう感じるわけだけど、実際の生活、仕事は、なんの変化も感じない。髪の毛はずっと白髪混じりだし、染めたことも一度もないし、この30年くらいは散髪屋にも行っていない。この頃は、髪が長くなって邪魔になって目に入るようになると、自分で10分間散髪を試みるだけだ。65歳という年齢と外見のようなものを、ごちゃ混ぜに考える性分ではないのである。

 昨日は、世間では「父の日」ということで、先週、次女にウィスキーをプレゼントしてくれないか聞いてみた。たまたま見たFacebookアプリに、グレンモーレンジィの宣伝が出てきた。これは、去年行った銀座の友達のやっているバーで出されたものではないか?と。でも、ラベルが違うかな?と思いながら、自分のブログを振り返ってみた。去年の9月16日に書いた「週刊てーて」には、「グレンモーレンジィ キンタ・ルバンというルビーポートワイン樽で追加熟成したウィスキー」とある。アプリに出てきたグレンモーレンジィの銘柄違いというわけだった。なかなか良い値段で、自分のために買うには躊躇したのだ。

 ところが、次女は、すぐに調べてくれて、「うーん12年ものは高いから」と少し安めなものを注文してくれたようだった。次の日、長女がワインを送ってくれたと、宅配便からの連絡が入った。「明日ワインが届くそうだよ」と次女に伝えたら、それならと「私からも」と箱入りウィスキーを渡された。「あらもう、頼んでくれて到着していたのね」と喜んで見てみるとウィスキーの名前が若干違う。グレンモーレンジィではなくてグレングラントであった。ラベルも箱も色も似ているので、次女は間違えたのだった。同じスコッチウィスキーではある。

 それはそれで、十分に楽しめる味であった。次の日には、フランスの「スクレ・ド・シスト・ブラン シャトー・ド・ル」という難しい読みの白ワインが届いた。これはまた良い味で、フルーティさが前面にあるのだけれど、しっかりとした重さがあり、後味のよい、形容し難いような味も隠れていて、味わい深いワインだ。更に後日、長女はチーズのセットも送ってくれるらしい。

 子どもたちが、大人になって、誕生日や父の日の頃に、贈り物をしてくれる、それが僕の65歳の重さなのだろうか?世間では、そのようなことは当たり前なのかどうなのか、大手ショッピングモールには、「父の日にはウィスキーを」みたいな宣伝文句が並べられてもいた。商魂たくましいなと思っていたが、まさかね。でも、去年、友達のやっているバーに行かなかったら、グレンモーレンジィにピンと来るわけもなく通り過ぎていただろう。いつか、子どもたちをバーに連れて行ってあげたいな、と初めて思った。

 5人の子どもを育てるだけで精一杯で、ただひたすら走り抜けてきただけのような20年あまりだったけど、ご褒美もあるものなんだね。ありがたい。

2025年6月16日



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