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「けったいな梅雨と地這胡瓜」

 このけったいな梅雨に入って、いきなり梅雨の中休みのような真夏の日々。これがあと3ヶ月も続いたなら、このカラダは持つのかどうなのか?という不安がよぎる。そこへ熱帯低気圧の予報。いつまでも続く雨無し予報を打ち破るのは、いつだって台風なのだ。そして大雨をもたらし、その後に関西以西では梅雨明け宣言も出た。こちら東海地方でも、大雨の後は台風一過のような青空で、梅雨明けのようなお天気だ。

 僕たちはこの雨を待っていた。梅雨に入って雨を待つのもけったいだが、この時期まで植え付けできない野菜の苗があるのもまた異例のこと。雨の前に一気にナスやピーマン、シシトウやニガウリなどの苗を畑に植え付けた。また、南瓜の第2弾目の収穫も終えた。あとは胡瓜の収穫時に、残った南瓜の熟成を待って、ちょぼちょぼと収穫していくつもりだ。

 南瓜の収穫は、収穫して終わりという完結型に近い。五月いっぱいを受粉作業して、6月後半に2〜3度の一斉収穫、残ったものを随時回収して終わる。一方、胡瓜や葉物類の収穫というものは、一日一日の繋がりでできている。毎日収穫しては、明日の収穫分を認めておくわけだ。例えば胡瓜畑では、日照りの強い時には根本を覆って直射日光を遮る。胡瓜自身の蔓で株元を隠し、あるいは大きくなり過ぎた胡瓜を株元に置く。明日以降にも元気でいてくれるように、という未来への配慮は、胡瓜と会話するという行為へと繋がる。

 また、うちは地を這う地這胡瓜であるから、土や堆肥、草、虫と接触している胡瓜である。収穫した後に、さっと胡瓜を洗って、土などを取り除く。胡瓜の表面には良い菌も存在するはずで、それを洗い切ってしまわないようにしている。それでも、表面の菌たちは、洗えば少なからず落ちていく。それをバケツで」受けて溜めておいて、胡瓜畑に返す作業もしている。胡瓜は胡瓜の菌を欲するはずであるから。

 人間には、人間が必要であろう。胡瓜には胡瓜が必要であっても自然なこと。販売できなかった胡瓜や大きくなりすぎた胡瓜も、自分たちの生まれた環境に戻すことで、微生物として再生する、というイメージを持っている。人間も、死んでからも人の心に残るように、繋がっていると考えることは、心を安らかにする一因にもなりうる。お墓の存在もその一例か?

 過酷な環境で胡瓜は頑張ってくれているように見えるが、美しい実をつけることが彼らのやりたいことなのだ。素晴らしいな、君たちは、と毎日伝えても伝えすぎることはない。彼らはまっすぐな胡瓜ばかりではない。人間世界の市場は、胡瓜の規格を勝手に決めて胡瓜を扱いやすいようにしているのだろうが、胡瓜側にとってはいい迷惑だ。曲がりたい時には曲がるわけで、種を宿そうとする本能を優先しているのだろう。僕達に市場原理は関係ないけれど、極端に曲がってほとんど丸に近いようなものや、虫の禍根があるものが僕達の食べる胡瓜だ。よほど酷く虫に食われたものでなければ、味は変わらない。それどころか、地這胡瓜は地を這うのだから味も良い。多様な微生物の近くで育っているのだから当然だ。このけったいな梅雨であっても、のびのびと育つ胡瓜たちを僕は毎日愛でている。

2025年6月29日



胡瓜の花付き
7月の地這胡瓜畑

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