業務日誌(2002年9月その1)

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9月6日 法律相談強化週間?

 8月下旬から9月初旬にかけては裁判所の夏休み明けで忙しいと書きましたが、今週はなぜかもう一つの理由が追い打ちをかけています。

 気がつくと、今週は法律相談担当の嵐。火曜日午後の池袋法律相談センターの担当、水曜日午後の霞ヶ関法律相談の担当に続いて、本日午前中は上野法律援助センターでの法律扶助協会の相談です。そしてさらに、明日の午前中は新宿の家庭問題法律相談、午後はまたまた池袋法律相談センターでの相談と、何と週間5ヘッダーという詰め込みぶり。まるで一人法律相談強化週間です(^^;

 明日の午後に関しては、何も考えずに他の弁護士と担当日の交換に応じてしまったせいですが、それがなくとも何で1週間に4つも重なるのやら。

 おかげで今週は通常業務が滞留しまくっており、来週に尾を引きそうです。ため息。




9月5日 裁判官の報酬

 裁判官の報酬が人事院勧告により、戦後初めて引き下げられることになりました。

 まあ、裁判官でなくとも国家公務員一般の給与にしても、多分引き下げは初めてではないかと思いますが、なぜこの話がニュースになるかというと、憲法の規定に反しないのか、と言う問題があるからです。

【憲法79条6項】
 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

【憲法80条2項】
 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。


 これらの規定は裁判官の政治的独立性を保つため、身分保障の観点から定められたものです。要するに、裁判官の給与が政治によって恣意的に減額自由となれば、時の権力にとって不都合な裁判官は給与引き下げの恐怖と戦わねばならなくなるため、これを防ごうという趣旨から定められたものでしょう。

 だとすれば、デフレ状態の現在、物価水準の下落に伴う引き下げは、裁判官の給与を実質的には引き下げるものではなく、恣意的な政治的引き下げとも違いますから、まあ憲法の趣旨に反するようなことではないでしょう。




9月3日 小菅→池袋→水戸

 9月に入って、本日あたりからなぜか出張が目白押しです。

 本日は朝、まず小菅の東京拘置所に接見。被告人が病気で医療棟にいるため、接見室も普通と異なります。

 この医療棟の接見室がくせ者で、何と被告人側には冷房が入るのに、接見する側には冷房が入りません。おかげで残暑の中、サウナに1時間入っていたようなものでした。

 事務所に戻って昼食もそこそこに、池袋の法律相談センターに出勤(5分遅刻してしまった(^^;)。法律相談を4件こなして、最後は上野駅に出てスーパーひたちに乗って、水戸の弁護士と打ち合わせのため出張です。

 午後5時発のスーパーひたちの乗客は「出張帰り」のサラリーマンで満員で、みなさんビールとおつまみ片手に乾杯してやがる。こちらはこれから仕事なので飲むわけにもいきません………。


9月3日追伸 ソフトウエアの不正使用提訴

 マイクロソフトやジャストシステムがコンピュータスクール相手に提訴したそうです。

Microsoftなど5社が、コンピュータスクール3校を提訴〜ソフトの不正使用で損害賠償額は5億7千万円
各スクールに対する請求額は、東京コンピュータ専門学校が約1億9,244万円、東京ゲームデザイナー学院が約2億9,793万円、ヘルプデスクが約7,856万円。損害賠償額はソフトウェアの正規の価格の合計を2倍し、それに弁護士費用などの諸費用を含めて算定したものだという。

 同種の事件では、昨年、司法試験予備校大手のLECがマイクロソフトら相手に一敗地にまみれた判決が出ているのが有名です。

 ソフトをコピーして使用しているのが発覚した場合、「見つかったらそれから金払って買えば文句ないだろ」と考えがちですが、LEC判決はこの抗弁が否定されました。「被告は,原告らから違法複製品の使用の中止を求められた後,新たに本件プログラムの使用を希望して,本件プログラムの正規複製品を購入したことが窺える。しかし,被告の上記行為は,不法行為と別個独立して評価されるべき利用者としての自由意思に基づく行動にすぎないのであって,これによって,既に確定的に発生した原告らの被告に対する損害賠償請求権が消滅すると解することは到底できない」とされたのです。

 ただ、同時にLEC判決は、原告らが損害額としてソフトの正規価格の2倍を求めたことは排斥し「被告の利益額は,無許諾複製したプログラムの数に正規品1個当たりの小売価格を乗じた額であると解するのが相当である」「そして,原告らの受けた損害額は,被告の得た前記利益額と同額であると推定されるべきである」としました。

 今回、マイクロソフトらは再び損害額として正規品の2倍の価額を主張しています。多分に抑止効果を狙った側面もあるのでしょうが、裁判所の判断が注目されます。




9月2日 パートタイム裁判官(3)

 昨年8月22日12月4日の続きですが、久々にこの話題です。

 いよいよ最高裁と弁護士会が制度導入の準備を始めるそうで、パートタイム裁判官任官の希望者募集が始まりました。

 何でも、弁護士経験5年以上で55歳未満の弁護士であれば有資格者であるとのことで、私の手元にも募集要項が送付されてきました。

 へええ、これでは調停委員よりも間口が広い募集要件だなあ、ずいぶんと最高裁も思い切っているなあ、と感心していたのですが、実際は全然違う、という噂を耳にしました。

 何でも、上記の募集要件はあくまで表向きのもので、実際には裏の「資格要件」が存在するとか。それは、弁護士会の要職(副会長等)経験者に限る、と言うものらしいです。

 言っておきますが、東京弁護士会で弁護士会副会長等経験者で55歳未満の者など20人程度しかいません。これでは調停委員、司法委員に次ぐロートル弁護士の名誉欲を満たす地位に堕することは明白です。なあーんだ、最高裁の本音が透けて見えました。

 真の法曹一元への道はまだまだ遠いようです。