業務日誌(2002年8月その3)

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8月31日 有罪判決

 昨日午後、私が弁護人の一人として4年にわたって担当してきた刑事事件の判決がありました。

 そう、3月27日に最終弁論を行ったその事件です。

 小さな扱いながらマスコミにも取り上げられてしまいましたので、引用しますと、

バラバラ殺人:フィリピン人被告に懲役15年 東京地裁判決

でした。

 関与したのが当方の被告人(男)とその愛人で、お互い死体遺棄・損壊については共同実行を認めつつも、殺人についてはお互い「相手が殺した」と主張する構図でした。

 検察側は逡巡の末、愛人の供述に乗って、当方の被告人を殺人罪で起訴したわけです。当然、愛人の供述の信用性が法廷で問われ続けたわけで、弁護側としても愛人の供述をいかに弾劾するかに力を注いできました。

 昨日の判決での裁判所の有罪認定の理由は信じがたいものでした。

 愛人の供述がいかに信用ならないものであるか、この点については弁護側の主張を8割方認め、検察官の主張をことごとく排斥しました。

 しかし、判決は有罪です。

 裁判所のロジックは、簡単にいってしまえば「愛人の供述は全く信用ならない点が多い。しかし、この愛人はそういう一貫性のない供述をする性格なのだ。だから供述内容のうち、「被告人が殺した」という一貫している部分だけは信用してよい。一方被告人はそういう性格ではない。それなのに供述に一部おかしな点がある。だから信用ならない」というものでした。

 わかりますか?要は「いい加減な供述をする証人の方が信用できる」と言っているに等しいようなのです。言い換えれば、「証人の証言はおかしな点があってもよいが、被告人の弁解にはおかしな点があってはならない」と言っているようなものです。

 検察官の主張する事件の構図が認められて有罪が認定されたのなら、被告人には申し訳ないですが、法律家としては負けを認めざるを得ませんが、検察官の構図はほぼ全面的に否定されたにもかかわらず、なぜか有罪が認められるというのは何とも納得がいきません。

 ボクシングにたとえれば、KOできないにせよ、12R優勢に試合を進め、試合終了のゴングが終わった瞬間、レフェリーから横っ面を張っ倒されたようなものでしょうか。

 まあ、これ以上書きますと控訴趣意書のようになってしまいますのでもうやめにしますが、日本の刑事司法が「絶望的である」と言われる現場に立ち会ってしまったような気がします。少なくとも、大学で教えられている刑事訴訟法の理念とは全く相容れない別な司法を身をもって体験してしまいました(こう書くと、刑事弁護で苦労されている先輩方からは「1回ひどい目にあったくらいでわかったような口を利くな!」と言われそうですが)。

 しかし、どれだけ嘆いても弁護人は自分が刑務所に行くわけではありませんから、まだいいです。こんな説得力のない判決で有罪を宣告される被告人が可哀想です。




8月29日 夏休み明けの裁判所

 ハギトモ復活を喜んでいたら、過呼吸で倒れて結局本命の背泳ぎを棄権になってしまいました。今ひとつタフになりきれないようですね。

 で、パンパシもあっという間に終わってしまいましたが、忙しくてほとんどテレビは見られませんでした。

 8月下旬と9月上旬というのは、弁護士にとっては最も忙しい時期かも知れません。なぜかというと、裁判所の夏休み(夏期休廷期間)明けにあたり、夏の間期日が入らなかった裁判の期日が集中して入ってくるからです。

 本日も、朝11時に東京簡裁で1件、午後1時に横浜地裁で1件、一度事務所に戻り、午後4時30分に再び東京地裁で1件、と振り子のような一日でした。

 1日に法廷が2件までならそうはきつくもありませんが、3件、しかも裁判所もバラバラとなると、事務所にいる時間は全く取れず、一日中移動ばかりしているような錯覚に陥ります。

 これまた不思議なのですが、なぜかそのように裁判で忙しい時期に限って、新件の相談が寄せられたりして、もはや来週まではスケジュールを調整するのに四苦八苦の状態になってしまいました。忙しいときほどさらに忙しくなる、マーフィーの法則ですかね。




8月26日 T30導入

 ハギトモ復活おめでとうございます。自己ベストの更新を期待しています。(ってパンパシ水泳の話です)

 それはそうと、事務所の事務局用に、4月25日の日誌で酷評したThinkPadT30(2366-K2J)を買いました(写真をまだ撮っていませんが………)。

 今まで、その事務局には、私のお古の560(2640-FJE)を使ってもらっていました。

 キータッチの良さなどは、今でも他の追随を許さない名機ではあるのですが、いかんせん無印Pentium133Mhzではいくら何でも重すぎるようになりました。

 おまけに液晶の明るさ調整つまみはいかれているし、さらに外付けフロッピーディスクドライブの接続端子も接触不良になってしまっており、さすがに事務局から苦情が出ても当然の状態になってしまいました。

 で、酷評したT30ではあるのですが、現行のラインナップからして結局これしか選ぶものがなく(R30は品質に不安が残る)、安めのモデルをWebで探し、注文したわけです。

 事務所で最初のXPモデルですが、慣れれば徐々に他のパソコンもXP導入を図っていこうと考えています。




8月21日 弁護士報酬規定廃止?

 このHPからもリンクを貼っている弁護士会の弁護士報酬会規が風前の灯火です。

 現行の弁護士法では、弁護士会は弁護士の報酬に関する基準を定めなければならないことになっています。

 しかし、司法改革の一環なのか、規制緩和の流れなのか、公正取引委員会が「弁護士会が弁護士の報酬を決めることは、カルテルの一種」という見解を示し、報酬規定は廃止の方向で法改正が検討されています。

 背後には「弁護士の数を増やし、報酬規定を廃止すれば、弁護士報酬の値引き合戦が期待できる」との大企業の思惑があるとも言われています。

 マスコミでも、報酬規定の廃止=値下げというような論調の報道が見られるからか、先日私が担当した弁護士会の電話相談では「今度、弁護士の報酬が値下げになるんですか?」などというあけすけな相談もありました。

 しかし、です。既に他の税理士や弁理士の世界でも次々に報酬規定が廃止されていますが、例えば弁理士の世界では、数年前に比べて明らかに報酬が値上がりしている分野があるそうです。弁護士の世界も本当に値下がりするのかは、不明です。

 弁護士の報酬の場合、現行の報酬規定自体が非常に抽象的であるため「わかりにくい」という批判があるのは事実で、これはなんとかすべき問題でしょう。報酬の自由化→わかりやすい報酬基準の宣伝合戦という流れになれば、めでたしめでたし、ということになるのですが。