業務日誌(2005年3月その1)

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3月11日 ライブドア仮処分決定

  もう1億総評論家状態ですから、今更私ごときが論評しても、………という感もありますが、法律家の端くれですので一言。

 まあ法律的に冷静に考えると、ニッポン放送のフジ側への新株予約権発行が不公正な発行でないとするには相当なレトリックを必要とするわけで、差し止め仮処分が認められたのは至極まっとうな結論ではないかと思います。ライブドアが時間外取引で不意打ち的に株式を取得した手法の不当性を考慮に入れても、証券取引法上の問題点が直ちに商法上の他の論点に影響を及ぼすとは言えないでしょう。

 とりあえず全文が日経に掲載されました。

 ライブドアの行動は、確かに異端児的ですが、最近の商法改正が、どんどんこうしたゲーム的資本主義に適った方向に向かって行われていたわけですから、今更あわてて感情的になるのもいかがなものかなあ、という感じがします(私自身は最近の商法改正の方向自体がやや行き過ぎで日本的経営から乖離しすぎるのではないかと感じていますが)。




3月10日 司法支援センターフォーラムプレ企画

 本日、3月17日に行われる「日弁連司法支援センターフォーラム」のプレ企画として、横浜弁護士会でのミニ・コールセンター&無料電話相談会というものに参加してきました。

 なんだか長たらしい名前ですが、小泉さんが「司法ネット」構想としてぶちあげたものが制度化されると「司法支援センター」で、これに賛同する日弁連がフォーラムを開こうと言うことです。で、何で私が噛んでいるかというと、東弁副会長からの「天の声」で実行委員会のメンバーに巻き込まれてしまったから(天災モード)。

 それでフォーラムだけでも大変なのに、話題作りのためといって、プレ企画までぶちあげ、これを担当する横浜弁護士会との事前打ち合わせを手伝わされ、本日に至るわけです(全く忙しいのに………)。

 実際には今日やっていることは、今までも弁護士会レベルでやっている無料電話相談に毛の生えた程度のものですが、「横浜だけでやって、どの程度反響があるのか………」という事前の不安はどこへやら、電話回線いっぱいの電話が鳴り続けて盛況でした。




3月4日 雪中八丈島行

 
 本日は11月に続き、またまた法友全期会で八丈島へ相談会でした。私のコーディネート役も今回でようやくお役ご免です。

 ………のはずでしたが、昨日あたりから天気予報で「猛烈な雪」の予報がガンガン。不安におびえながら目を覚ますと、やっぱりドカ雪です。晴れなら空港まで車で行くのですが………それどころか駅まで行くのにスノーシューズの用意が必要になってしまいました。

 空港に着くと、フライト欠航の嵐………??というほどではありません。意外と飛んでます。予報ほど雪はひどくないようです。しかし、我々の目的地、八丈島空港への第2便(10:30)は?

 着いた瞬間の表示は「現地天候調査のためチェックイン一時停止中」でしたが、しばらくたって、あえなく「雪のため欠航」になってしまいました。恐るべし寒波、八丈島でさえ雪とは………

 あわてて搭乗便変更に走りますが、第3便は「キャンセル待ちが45人です」という状態だそうで、結局第3便(4:10)になってしまいました。あわてて八丈島商工会やレンタカー屋にも電話です。

 で、レンタカー屋に電話して「そちら雪だそうですねぇ」と言ったら、向こうは「え?雪なんか降ってませんよ。さっきまで雨降ってたけど、今は晴れてます」。。。「天候調査」って何を調査してるんだか??

 それにしても、突然5時間近くも時間が空いてしまいました。しかし、事務所に帰って仕事をするには、往復の時間を考えると、正味3時間ないくらいです。結局半分以上のメンツは、オープンしたばかりの第2ターミナルの店で昼間から飲んだくれてしまいました。昼から飲む酒は後ろめたいがうまい!しかし夜になることは頭が痛い………




3月2日 簡裁墨田分室

  育児と確定申告に追われ、またしても日誌が息も絶え絶え。

 本日の朝日新聞夕刊の記事ですが、東京地裁が裁判員制度のあおり膨張し、となりの東京簡裁の建物に浸食、あおりを食らって簡裁の調停部門が錦糸町の墨田分室に移転予定ということでした。

 実はこの話、我々にはしばらく前から知らされておりましたが、簡裁墨田分室というのは、現在は道交法違反事件(いわゆる赤切符)の略式刑事手続きくらいにしか使われていない建物です。これを改築して調停部門を移転、というのは、どっちかっていうと、裁判所が改築予算をぶんどる口実のために考えたのではないかと勘ぐりたくもなります。

 そもそも簡易裁判所というのは、私が小学生の頃は全国に575カ所もあったのが、その後大きく統廃合された経緯があります。都内も何カ所もあったはずでしたが、ある時に23区内はほとんど霞ヶ関1カ所に統合されてしまいました。

 その際の裁判所の言い分は、各地域の簡裁と、霞ヶ関までの所要時間を比べて「総じて霞ヶ関に出る方が所要時間が少ない」というものでした。そうやって霞ヶ関に一本化しておきながら、いつのまにか裁判所の都合で錦糸町に追い出してしまうというのは、いかにもお役所の考えそうな利用者不在の発想です。

 まあ、錦糸町というのは、実際には総武線快速停車駅で、西からも交通の便はそう悪くないし、所在も駅から近くて、不便とまでは言えないので、私自身は仕方がないかなあとは考えていますが。




3月1日 法科大学院と司法試験

 すったもんだの末、法科大学院の初年度卒業生の司法試験合格率は5割程度、ということになりそうです。一時は3割程度という報道が流れて大騒ぎになったので、少しは改善されたのでしょうか。

 しかし、結局は合格者総数1600人〜2000人程度、という枠内での旧司法試験受験生との枠の奪い合いの構図になっていて、おかげで旧司法試験にまだ望みを託している受験生の来年度は、より狭き門になってしまいました。まだ旧司法試験を受験している知り合いのいる身としては、ちょっと複雑です。

 また、5割程度の合格率が見込まれるのは初年度だけで、2年目はすぐに合格率が下がってしまうものと予想されており、かえって不公平のような気もします。

 確かに法科大学院側の言うとおり、「司法制度改革審議会最終意見書」第2の2(2)エでは、

 「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである」

とありましたので、「合格率8割」が公約と受け止められるような下地はあります。

 しかし、一方で、新司法試験開始後の毎年の合格者見込み数は、かなり前から明らかにされていたわけで、これと法科大学院の定員数を見比べれば、「合格率8割」なんていう魔法は絶対に出てこないことは明らかでした(これはここに書いたとおり)。要するに、法科大学院を認可しすぎなんですよ!文科省が。司法試験を管轄する法務省と、法科大学院を管轄する文科省が、需給関係を考えずバラバラに行動している結果がこの矛盾でしょう。