弁護士の選び方・頼み方講座



Q6 「提携弁護士」を見分けるポイントは?

 Q5で述べたように、業者から紹介されたのであれば、それはかなり危険です。しかしながら、Q4で述べたように、広告を頼りに弁護士に依頼した場合、見分けるにはどうしたらよいか。

 以下の8項目のうち、3つ以上当てはまる場合は相当提携弁護士の疑いがあると言っていいと思います。

@ あなたの話を聞いてくれているのが主に弁護士ではなく、そうではない人(事務員、秘書、補助者、パラリーガルなどいろいろな名乗り方があります)ではないか。

  ← Q5で説明したとおりです。

A 事務所にいる弁護士と事務員の比率が1対10以上ではないか。

  ← 一般の国内事件を扱う法律事務所の場合、通常弁護士と事務員の人数比は、1対1か1対2、多くても1対5くらいです。それ以上多い場合、なぜそんなに事務員ばかり多いのか疑ってみる必要があります。

B 債務整理について、任意整理ばかりを強引に勧め、破産という選択肢については消極的ではないか

  ← 破産申立になると、弁護士が裁判所に出頭する必要があるため、整理屋単独では事件が進まなくなることから、整理屋はいやがります。破産になると毎月返済資金をプールさせるという口実でそこから弁護士報酬をごっそり抜くという技も使えないという理由もあります。

C 着手金や成功報酬の説明をきちんとしてくれているか。

  ← 最近は契約書にも書いてあったりしますが、あまり説明されないことも多いです。

D 任意整理で着手金を決める基準が、業者の数ではなく、負債総額を基準としていないか。

  ← 東京の弁護士会では、任意整理の場合、現在業者数を基準として着手金を決めています。提携弁護士の場合、負債総額の1割(あるいは数%)という基準が多く、ほとんどの場合相当割高になります。

E 個々の業者との交渉や和解締結の状況を定期的に報告してくれるか

  ← 多くの提携弁護士の場合、こうした進行状況はほとんど報告されません。業者との和解交渉も依頼者の意思に関係なく勝手に行われ、知らない間に知らない内容の和解契約が行われている(あるいはほったらかしにされている)ことがほとんどです。

F 業者との和解契約は、利息制限法による引き直し計算をした残額を基本とした額が元本となっているか。

  ← 東京の弁護士会では、業者に全取引経過を開示させ、その取引を通じて利息制限法引き直し計算をした残額を残元本とし、この残元本を分割で支払う提案をするよう統一基準が定められています。提携弁護士は、たとえ広告では「利息制限法引き直し」を謳っていても、実際には業者に全取引を開示させる交渉をするのは面倒なことから、引き直し計算をしないまま、業者の言いなりの額で和解を結んでしまう場合が多くあります。

G 弁護士に支払ったお金のうち、一体いくらが債権者(業者)に支払われ、いくらが弁護士報酬に充当されたのか報告があるか

  ← Eと同じで、多くの提携弁護士の場合、報告がありません。

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Q7 メールでの法律相談は有効か?

 既に事件を依頼している弁護士にメールで連絡を取ったりするのは、当然、何の問題もありません。ここで取り上げるのは、弁護士と一度も顔を合わせない段階で、いきなりメールで法律相談をしてその回答を受ける場合です。

 HPを開いている弁護士の場合、「メールによる法律相談」に応じていることがよくあります。

 この「メールによる法律相談」の有効性については、弁護士の間でもまだ評価がまっぷたつに別れていますが、私自身は現時点では消極的です。

 その理由は、

@ メールでは相談者の顔が見えない。本当に自分自身の相談か、他人になりすましているのか、偽名を使っているのか、単なる冷やかしなのか等のリスクを判断する材料がない。

A メールである以上、相談者から寄せられる情報がきわめて限られる。30分の対面の相談で得られるのと同等の事情を聞き出そうとすると、相当の回数のメールのやりとりをしなければならない。また、対面の相談ならすぐに確認できる契約書等の客観的証拠も、現物を確認できない。

 からです。@は純粋に弁護士の側のリスクの問題、といえなくもありませんが、弁護士もリスクをおそれる結果、踏み込んだ見解を示せなくなることになります。Aは正確な回答ができない恐れがある、という意味で直接相談者の不利益を生むリスクがあります。

 私の知っている範囲でも、従前メールによる有料の法律相談を受け付けていた弁護士が中止していたりしますので、現状ではデメリットがメリットを上回っていると言わざるを得ません。

 しかしながら、弁護士への相談のきっかけとしてメールをご送付していただくこと自体は有効だと思われます(人によっては、突然法律事務所に電話をかけるよりもメールで打診してみる方が気楽に出来るでしょうし)。そこで、私自身もメールによる「法律相談の予約」のみを受け付けております。

 仮にメールによる法律相談を受け付けている弁護士に相談をする場合には、以上のようなリスクがあることを心得た上で相談されるようお願いします。

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Q8 弁護士に専門分野はあるのか?

 よく、初対面の方から「専門分野は何ですか?」と聞かれますが、私はじっくり説明する時間がないときは「何でも屋です」と答えています。

 実際問題、日本の弁護士は大多数が「何でも屋」です。

 民事専門、刑事専門という程度なら、日本でも「刑事はちょっと苦手で………」という弁護士は結構いますから、「民事専門」弁護士はかなりいる、ということになるでしょう。逆に日本では「刑事専門」は経営が成り立たないため、ほとんどいないと行っても過言ではありません。ですから、「民事専門」と威張ってみたところで、それはその弁護士が「刑事は扱わない」ことを示すに過ぎず、民事事件が得意だと言うことにはなりません。

 そんな中でも、専門分野として成立している分野がいくつかはあります。

@ 渉外事件

  海外との交渉、契約締結等の業務を中心とした企業法務を専門に扱う事務所は日本でも相当数存在し、「渉外事務所」と呼ばれています。

A 知的財産権関係事件

  特許紛争などを専門に扱う事務所は、弁理士と合同で事務所を作っている場合が多く、事務所名が「特許法律事務所」などとなっているので、比較的容易に判別できます。

B 交通事故事件

  これは保険会社の顧問弁護士となって加害者側の代理人ばかりをやる場合と被害者側の代理人に特化している場合と2種類あります。

C 破産、倒産関係事務所

  これは破産申立に特化しているのではなく、大型の破産管財事件や会社更生事件等を一手に引き受けるタイプの事務所です。

 その他の分野は、現状では弁護士の「得意分野」となる場合はあるでしょうが、現状ではその一分野だけで経営していけるほどの依頼が集まらないため、専門弁護士として特化するには至っていないようです。また、医者と異なり弁護士には専門認定制度がないため、「専門分野」「得意分野」というのは、現在広告で表示が認められていません。

 また、上記の分野でも、専門的な事務所にいなくてもその分野にある程度通じている弁護士は少なくありません。例えば私も知的財産権事件を扱ったりしています。

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Q9 その分野の専門の弁護士に相談しないと心配か?

 Q8で説明したように、現在、弁護士が「専門分野」「得意分野」を広告するのは禁じられています。「特に関心を持って取り組んでいる分野」とか「取り扱い分野」の表示は認められておりますので、この表示を手がかりに弁護士を捜すことはできるでしょう。

 しかし、「取り扱い分野」なんてのは、医者の「専門医」に比べたら、はるかに客観性に欠ける表示であることは否めません。

 「その分野の専門家である弁護士でなければ、心配だ」という方も多いかも知れませんが、Q8で述べたように、そもそも日本ではスペシャリストがいる専門分野はそれほど多くありません。

 そもそもどんな弁護士といえども、全ての分野に精通しているわけではありません。それなのに「何でも屋」が成り立つのは、@基本となる法知識を理解していれば、応用により解決できることがほとんどである、A適切な調査能力さえ持っていれば、その分野の解決方法を見つけることが可能である、という理由によります。

 実際、弁護士が弁護士たる所以は、「法律」を知っているからではなく、「問題となる法的解決方法を調査する方法」を知っているからとさえ言えます。

 ですから、通常の民事事件で弁護士の専門性を余り心配する必要はないでしょう。むしろ、その弁護士の調査能力のセンスに気をつけるべきです。知らないことを知ったかぶりするのではなく、次回会ったときにきちんと調べて答えを見つけているかを気にすべきでしょう。

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Q10 大事務所の弁護士と小規模事務所の弁護士、違いは?

 アメリカの何千人もいるロー・ファームには到底かないませんが、日本にも弁護士100人に迫ろうかという大事務所があると思えば、弁護士が一人でやっている個人事務所も多数あります(というか、数で言えば個人事務所の方が圧倒的に多いです)

 まずこの両者、弁護士の能力に何か差があるのか、といえば、別にそのようなことはありません。大事務所にも使えない弁護士はいるでしょうし、個人事務所でありながらその世界では知らない人はいない辣腕弁護士もいます。

 では、何が違うかと言えば、大事務所ほど、大きな案件をその事務所だけで引き受けられるという強みはあるでしょう。実際、大企業はいざ事件となれば大量の労力をつぎ込む必要のあるものが多くなるため、どうしても大事務所に頼る傾向があります。

 この点、小規模な事務所は大きな案件は受けられないかというと、全くだめと言うことはなくて、そういう事務所の場合は他の事務所の弁護士と連携することで、大きな事件を受任することもあります。でも、効率性という点では大事務所にはかなわないかも知れません。

 では、やはり、大事務所の方が質の高い法的サービスを受けられるのか?というと、これはケースバイケースです。

 前述のように大量の労力を必要とする事件であればやはり大事務所とは思われます。しかし、大事務所であればあるほど、個々の弁護士の自由裁量の幅は少なくなりがちです。大きな事件を扱っていると言っても、分業制でやっているため、下っ端の弁護士には全体像は見えないでしょう。

 これに対して、小さな事務所の弁護士は、小さな事件といえども常に自分が全責任を負って遂行するわけですから、事件の全体像をつかむ能力には長けています。大事務所の多くの弁護士より、自由裁量の幅が広い分だけ、フットワークが軽いということも期待できるでしょう。

 言ってしまえば、大事務所の弁護士は有能なサラリーマン、小さい事務所の弁護士はやり手の個人事業家といえるでしょうか。医者に例えるとすれば、大事務所は大病院、小さい事務所は町医者だと思ってもらって結構です。検査機材が揃っていて、最新の検査や治療が受けられるのが大病院、しかし、3時間待たされて診察は3分で終わり、個々の患者の個性までは対応してくれない欠点もある。これに対し、町医者は最新の治療は望むべくもないが、かかりつけになることで気軽に何でも相談できる存在になる。法律事務所も似たものがあるような気がします。

 ですから、どちらを選ぶかは、自分が抱えている事件の性質を考慮し、自分がどのような法的サービスを望んでいるのかを考えてから選んでいただければよいでしょう。

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