和歌と俳句

古今和歌集

恋歌四

典侍藤原よるかの朝臣
たのめこし言の葉今はかへしてむ わが身ふるればおきどころなし

返し 近院の右のおほいまうちぎみ源能有
今はとて返す言の葉ひろひおきて おのがものからかたみとや見む

よるかの朝臣
たまぼこの道はつねにもまどはなむ 人をとふとも我かとおもはむ

よみ人しらず
待てといはばねてもゆかなむ しひてゆく駒のあし折れ前の棚橋

閑院
逢坂のゆふつけ鳥にあらばこそ 君がゆききをなくなくも見め

伊勢
ふるさとにあらぬものから わがために人の心の荒れて見ゆらむ


山がつのかきほにはへるあをつづら 人はくれともことづてもなし

さかゐのひとざね
大空は恋しき人のかたみかは 物思ふごとにながめらるらむ

よみ人しらず
あふまでのかたみも我はなにせむに 見ても心のなぐさまなくに

おきかぜ
あふまでの形見とてこそとどめけめ 涙にうかぶもくずなりけり

よみ人しらず
形見こそ今はあだなれ これなくは 忘るる時もあらましものを