典侍藤原よるかの朝臣
たのめこし言の葉今はかへしてむ わが身ふるればおきどころなし
返し 近院の右のおほいまうちぎみ源能有
今はとて返す言の葉ひろひおきて おのがものからかたみとや見む
よるかの朝臣
たまぼこの道はつねにもまどはなむ 人をとふとも我かとおもはむ
よみ人しらず
待てといはばねてもゆかなむ しひてゆく駒のあし折れ前の棚橋
閑院
逢坂のゆふつけ鳥にあらばこそ 君がゆききをなくなくも見め
伊勢
ふるさとにあらぬものから わがために人の心の荒れて見ゆらむ
寵
山がつのかきほにはへるあをつづら 人はくれともことづてもなし
さかゐのひとざね
大空は恋しき人のかたみかは 物思ふごとにながめらるらむ
よみ人しらず
あふまでのかたみも我はなにせむに 見ても心のなぐさまなくに
おきかぜ
あふまでの形見とてこそとどめけめ 涙にうかぶもくずなりけり
よみ人しらず
形見こそ今はあだなれ これなくは 忘るる時もあらましものを