古今集・秋
秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
古今集・秋
秋の夜のあくるも知らずなく虫はわがごと物やかなしかるらん
古今集・秋
秋萩の花さきにけり高砂のをのへの鹿は今やなくらん
古今集・秋
秋の野に宿りはすべしをみなへし名をむつまじみ旅ならなくに
古今集・秋
なに人かきてぬぎかけし藤袴くる秋ごとに野べをにほはす
古今集・秋
しら露の色はひとつをいかにして秋のこのはをちぢにそむらん
古今集・秋
久方の雲のうへにてみる菊は天つほしとぞあやまたれける
古今集・秋
わがきつる方もしられずくらぶ山木々のこのはのちるとまがふに
古今集・物名
心から花のしづくにそぼちつつうくひずとのみ鳥のなくらん
古今集・物名
くべきほど時すぎぬれやまちわびて鳴くなる声の人をとよむる
古今集・恋
恋ひわびてうち寝る中に行き通ふ夢の直路はうつつならなむ
古今集・恋・小倉百人一首
住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらん
古今集・恋
わがごとく物やかなしき郭公時ぞともなくよただなくらん
古今集・恋
つれづれのながめにまさる涙川袖のみぬれてあふよしもなし
古今集・恋
明けぬとてかへる道には こきたれて 雨も涙もふりそぼちつつ
古今集・雑歌
玉だれのこがめやいづらこよろぎの磯の波わけ沖にいでにけり
古今集・雑歌
老いぬとてなどかわが身をせめぎけん老いずは今日にあはましものか
古今集・雑躰俳諧歌
いくばくの田を作ればか ほととぎす しでのたをさを朝な朝なよぶ
古今集・東歌
ちはやぶる加茂の社の姫小松万世ふとも色はかはらじ
後撰集・春
降る雪のみのしろ衣うちきつゝ春きにけりとおどろかれぬる
後撰集・春
春雨の花の枝より流来ば猶こそ濡れめ香もやうつると
後撰集・恋
わが恋の数をかぞへば天の原曇りふたがり降る雨のごと