としゆき朝臣
久方の雲のうへにてみる菊は 天つほしとぞあやまたれける
きのとものり
露ながら折りてかざさむ 菊の花 おいせぬ秋のひさしかるべく
大江千里
うゑし時花まちどほにありしきく うつろふ秋にあはむとや見し
すがはらの朝臣
秋風のふきあげにたてるしらぎくは 花かあらぬか浪のよするか
素性法師
ぬれてほす山路のきくの露のまに いつか千年を我はへにけん
とものり
花みつつ人まつ時は 白妙の袖かとのみぞあやまたれける
とものり
ひともとと思ひし花を おほさはの池のそこにもたれかうゑけん
つらゆき
秋の菊にほふかぎりはかざしてん 花よりさきと知らぬわが身を
凡河内みつね
心あてに 折らばや折らん 初霜のおきまどはせるしらぎくの花
よみ人しらず
いろかはる秋の菊をば 一年にふたたびにほふ花とこそ見れ
平さだふん
秋をおきて時こそありけれ 菊の花 移ろふからに色のまされば
つらゆき
さきそめしやどしかはれば 菊の花 色さへにこそ移ろひにけれ
よみ人しらず
佐保山の柞のもみぢちりぬべみよるさへ見よと てらす月かげ
藤原関雄
奥山のいはかきもみぢちりぬべし てる日の光みる時なくて
よみ人しらず
竜田河もみぢ乱れてながるめり わたらば錦中やたえなむ
よみ人しらず
竜田川もみぢばながる 神なびのみむろの山に時雨ふるらし
よみ人しらず
恋しくは見てもしのばん もみぢばを吹きなちらしそ 山おろしの風
よみ人しらず
秋風にあへずちりぬるもみぢばの ゆくへさだめぬ我ぞかなしき
よみ人しらず
秋はきぬ 紅葉はやどにふりしきぬ 道ふみわけてとふ人はなし
よみ人しらず
ふみわけて更にやとはむ もみぢばのふり隠してし道と見ながら
よみ人しらず
秋の月山辺さやかにてらせるは おつるもみぢの數を見よとか
よみ人しらず
吹く風の 色のちぐさに見えつるは 秋のこのはのちればなりけり
せきを
霜のたて露のぬきこそよわからじ 山の錦の織ればかつちる