けづり花 文屋やすひで
花の木にあらざらめどもさきにけり ふりにしこのみ なる時もがな
しのぶぐさ きのとしさだ
山たかみ常にあらしのふく里は にほひもあへず花ぞちりける
やまし 平あつゆき
ほとゝぎす 峯の雲にやまじりにし ありとは聞けど見るよしもなき
からはぎ よみ人しらず
空蝉のからはきごとにとゞむれど 魂のゆくへを見ぬぞかなしき
かはなぐさ ふかやぶ
うばたまの夢になにかはなぐさまん うつゝにだにもあかぬ心を
さがりごけ たかむこのとしはる
花の色はたゞひとさかりこけれども 返す返すぞ露はそめける
にがたけ しげはる
いのちとて露をたのむにかたければ 物わびしらになく野べの虫
かはたけ かげのりのおほきみ
さ夜ふけてなかばたけゆく久方の月ふきかへせ 秋の山かぜ
わらび 真せい法師
煙たちもゆとも見えぬ草の葉を たれかわらびと名づけそめけん
さゝ まつ びは ばせをば きのめのと
いさゝめに時まつまにぞ日はへぬる 心ばせをば人に見えつゝ
なし なつめ くるみ 兵衛
あぢきなし なげきなつめそ うき事にあひくる身をば捨てぬものから
からこと 安倍清行朝臣
浪の音のけさからことにきこゆるは 春の調やあらたまるらん
いかゞさき かねみのおほきみ
かぢにあたる浪のしづくを 春なれば いかゞさきちる花と見ざらむ
からさき あぼのつねみ
かの方にいつからさきにわたりけん 浪路はあとも残らざりけり
伊勢
浪の花おきからさきてちりくめり 水の春とは風やなるらむ
かみやがは 貫之
むばたまのわが黒かみやかはるらん 鏡のかげにふれる白雪
よどがは
あしひきの山辺にをれば 白雲のいかにせよとかはるゝ時なき
かたの たゞみね
夏草のうへはしげれるぬま水の ゆく方のなきわが心かな
かつらのみや 源ほどこす
秋くれど月のかつらのみやはなる 光を花とちらすばかりを
百和香 よみ人しらず
花ごとにあかず散らしし風なれば いくそばくわがうしとか思ふ
すみながし しげはる
春霞なかしかよひぢなかりせば 秋くるかりはかへらざらまし
おき火 みやこのよしか
流れいづる方だに見えぬ涙がは おきひむ時やそかはしられん
ちまき 大江千里
のちまきのおくれて生ふる苗なれど あだにはならぬたのみとぞきく
僧正聖宝
花のなか目にあくやとてわけゆけば 心ぞともに散りぬべらなる