千里に旅立て 路粮をつゝまず 三更月下無何に入ると云けむ むかしの人の杖にすがりて 貞享甲子秋八月江上の破屋をいづる程 風の聲そぞろ寒氣也 野ざらしを心に風のしむ身かな 秋十とせ却て江戸を指故郷 関こゆる日は 雨降て 山皆雲にかくれたり 雰しぐれ冨士をみぬ日ぞ面白き 何某ちりと云ひけるは 此たびみちのたすけとなりて 萬いたはり心を尽し侍る 常に莫逆の交ふかく 朋友信有哉此人 深川や芭蕉を冨士に預行 ちり