長月の初め 古郷に帰りて 北堂の萱草も霜枯果て 今は跡だになし 何事も昔に替りて はらからの鬢白く 眉皺寄て 只命有てとのみ云て言葉はなきに このかみの守袋をほどきて 母の白髪おがめよ 浦島の子が玉手箱 汝がまゆもやゝ老いたりと しばらくなきて 手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜