伊豆の國蛭が小嶋の桑門 これも去年の秋より
行脚しけるに我が名を聞て草の枕の道づれにもと
尾張の國まで跡をしたひ来りければ
いざともに穂麦喰はん草枕
此僧予に告ていはく
圓覺寺の大顛和尚今年睦月の初 せん化し給ふよし
まことや夢の心地せらるゝに
先道より其角が許へ申遣しける
梅こひて卯花拜むなみだ哉
杜國におくる
白げしにはねもぐ蝶の形見哉
二たび桐葉子がもとに有て 今や東に下らんとするに
牡丹蕊ふかく分出る蜂の名残哉
甲斐の山中に立よりて
行駒の麦に慰むやどり哉
卯月の末 庵に帰りて旅のつかれをはらすほどに
夏衣いまだ虱をとりつくさず