寺田真理子さん と 建築あそび 記録 2003-10-04 
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 学生時代01 SD編集
オランダでの展覧会 NAi010203040506  2部オランダでの生活 

SD編集

 伊東さんの紹介もあって早速、新建築とか行ってみだんですが・・。SDという雑誌があるんですが「そこの雑誌でやるのが私にとっては一番いいのかなー」と判断しました。

というのも私の場合は、世の中に出来た新しい建築を紹介していくという『新建築』よりは「テーマ性があってそこから社会を見ていくというようなメディアに興味があった」ので、「SDに入ろう」と思って面接したところ、なんとかタイミング良く就職できました。

私が就職したのは1990年で、ちょうどバブルが終わりかけている頃で、予算もあったし、いろいろ広告もついたりして勢いがあったのですが・・その後バブルが崩壊すると同時に徐々に予算も無くなり、厳しい状況にはあありました。

しかし、幸いにして自分の中で色々やりたいことが幾つかあったので、なかなか辞めたいという気持ちにはなりませんでした。今回一緒に参加している山本想太郎さん はじめ前回講師を務めた太田浩史さんや五十嵐太郎さん、そして貝島桃代さんと塚本さんのアトリエワンなどとも、SDの企画を通して親しくさせてもらいました。★

 私が建築雑誌の編集をして一番面白いと思っていることは、「建築を通して世の中のことが分かり、都市の事が分かる」こと。

つまり、「建築そのものが都市を作っているんだ」ということもあるんですが・・なにか世の中とか、都市とかが見えてきたときに、「自分自身にとっては一番そこで喜びがある」んですけども。

メディアを通して「そういった新しい発見なり、新しい価値観、あるいはやり方を伝えていければ」ということを絶えず模索しながら、SDを9年間という時間のなかで編集してきました。★

 私がSDでいくつか手がけてきたものに、「アジア同時代シリーズ」があります。これは90年代初期、アジアでもバブル期を迎えていて都市開発が進み、建築が盛んに建てられていました。都市が大きく変わろうとしていた時代でした。そこで「アジアの都市を既成の枠組みにとらわれず、同時代的な視点で新しく見つめよう」と、台湾特集を皮切りに、ベトナム特集、そして香港特集をやりました。

何冊か持って来てみたので興味があれば見てください・・

  会場に SD数冊を廻す

 ベトナム特集は、どちらかというと同時代というよりは歴史的な軸で分析してます。フランスが植民としていた地時代の建築を含めて・・このように、アジアは一時自分のなかで大きなテーマであり、時間を見つけてはアジア特集を組むべく旅行していました。

会場ゴソゴソ・・電気をつけてSDを見始める

もう一つ歴史的な部分にもとても興味があって、「モダニズムというのが大きなテーマでした」。・・「モダニズムと社会」あるいは「建築と時代の関係性」。つまり、モダニズムの建築が生まれる背景を知りたかったなぜあれだけ美しい建築が生まれたのかと。
  
私が編集したのは、日本のモダニズムでは土浦亀城さん、前川国男さん。


他はメキシコのモダニズムのホアン・オゴルマン。彼はメキシコで近代化に向けて社会運動が盛んだった時代の中で、モダニズム建築を生み出した建築家の一人です。とても面白かったのは、彼自身のバックグラウンドと、それが彼の建築ばかりか、彼自身の人生にまで影響したということ。とにかくメキシコ20−30年代あたりは本当に社会と芸術が密接に結びついていて、非常に質の高い面白いものがつくられた

 
私自身がSDで最後に企画した特集は、前回いらっしゃった太田浩史さんと一緒に企画したマティリアル特集です。

プロダクツが中心ですが、その素材の新しい特性「素材性を分析し、それがどのように応用されることで、社会にモノの新しい価値観を生み出していったのか、を紹介しました。

 この特集をやって一番思ったのは、やはりマス。つまり、プロダクトがいかに社会のニーズを反映したものであるのか、社会との近い距離を建築以上に感じました

 公共建築もそうですが、社会のニーズ(マス)をもっとプロダクト的な視点で、より身近に引き寄せながら考えると、どういった建築が生み出されるのか、ということは考えざるを得ませんでした。いずれにしても、この特集を通して、いろんなことが勉強になった特集でした。

さらに興味をもっていたのは、「建築の生まれる背景としての都市」とか「社会との関係のなかでどう建築が生まれるのか・・

建築のあり方が都市との関係性のなかで生み出され、それが端的に表れているのが、オランダです。オランダ特集を編集して、非常にそのあり方、建築のできるプロセスに興味を持ったこともあり、結局、その後私はオランダに行くことになりました。

オランダというのは社会システムが面白くて、幾つかキーワードを上げているのですが、「合理的である」とか「ホリゾンタル(関係性が対等)」「合意形成(コンセンサス)」等など。

そういった世の中のシステムが建築にも非常に大きく反映されているし、実際オランダで生活してみると、具体的に分かってくるのですけども。日本とは全く違って、ドライに合理的に出来ている社会で暮らしてみたいと・・その号を通して思いました


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