三岐鉄道 借入機関車
借入機関車の概要(鉄道別借入順に掲載)
 三岐鉄道は以下のような機関車不足の際に各社から借入を行った。
  ●1954(昭和29)年ごろの全線電化による電機不足
  ●1960(昭和35)年ごろの関西電力黒部川第四発電所建設用セメントバラ積輸送(以下黒四輸送)
  ●2000(平成12)年〜2002(平成14)年の中部国際空港埋立用土砂輸送(以下中空輸送)
  ●車輌補修等による代車

日本国有鉄道ED22形(222)
 1926(大正15)年6月、米国Westinghouse(ウエスチングハウス)社が電気機器、Baldwin(ボールドウイン)社が車体を製作したもので、信濃鉄道1〜3号機として輸入された。1937(昭和12)年6月、鉄道省(現JR)に買収されて大糸線の一部(松本−信濃大町)となりED22形221〜223に改番され飯田線へ転属して活躍した。ED222は1954(昭和29)年には、西武鉄道多摩川線の電化入線試験に貸し出された。車体形状は凸形で日本製のコピー機も各地で活躍していた。
 三岐鉄道は1954(昭和29)年1月の全線電化で蒸気機関車を一斉廃止したため機関車不足となり、入換用としてED222を1955(昭和30)年6月〜翌年1月に借り入れていたと思われる。1956(昭和31)年1月に国鉄で廃車となり、同年9月に結局、三岐鉄道ED222として竣功した。

日本国有鉄道ED38形(384)
 1930(昭和5)年から電気機器を東洋電機製造、車体を日本車輌製造で製作された、阪和電気鉄道ロコ1000形1001〜1004で1940(昭和15)年に南海鉄道に合併、1944(昭和19)年5月、鉄道省に買収されて阪和線となった。ただ1004は買収後の1944(昭和19)年の完成である。1950年代前半にED38形381〜384に改番された。買収後も転属無く阪和線で活躍していた。ED384のみ、製造当初はパンタグラフも1基で、側面の溶接部帯材が省略されてすっきりしたスタイルである。
 ED38形は1959(昭和34)年に全車廃車となり、ED381〜383は秩父鉄道や大井川鐵道に売却されているが、三岐鉄道は黒四輸送のため、残ったED384を1959(昭和34)年9月に借り入れた。富山地方鉄道デキ19041(三岐鉄道ED454)を借り入れるため12月に返却された。国鉄返却後は解体されたと思われる。ED381が秩父鉄道三峰口駅にて静態保存されている。

日本国有鉄道ED35形(353)

 1942(昭和17)年12月、東京芝浦電気(現東芝)芝浦支社で製造された宮城電気鉄道ED35形353で1944(昭和19)年5月、鉄道省に買収されて仙石線になったが改番はされなかった。買収後も仙石線で活躍し1961(昭和36)年にED28形2811と改番されている。車体形状は凸形で東武鉄道ED4021形、名鉄デキ600形などと似ている。
 三岐鉄道は富山地鉄デキ19041を譲り受けた後も黒四輸送の電機不足のためED353を1960(昭和35)年3月に借り入れたが、牽引力不足のため4月にすぐ返却、代わりにED212を借り入れた。国鉄返却後は1962(昭和37)年に廃車となり1964(昭和39)年に京福電気鉄道(現えちぜん鉄道)へ売却されテキ531となって活躍したが、1980(昭和55)年11月に廃車解体されている。

日本国有鉄道ED21形(212)

 1928(昭和3)年6月、日立製作所で製造された富士身延鉄道210形210〜212で1941(昭和16)年3月、鉄道省に買収されて身延線となりED21形211〜213に改番された。買収後は阪和線や大糸線へ転属して活躍していた。車体形状は箱形で長野電鉄ED5000形などと似ている。
 三岐鉄道は黒四輸送のため小型のED353に代わってED212を1960(昭和35)年4月に借り入れたが、富山地鉄デキ19042(三岐鉄道ED455)を借り入れるため6月に返却された。国鉄に返却後の1973(昭和48)年に廃車解体されている。

富山地方鉄道デキ19040形(19041・19042)

 1957(昭和32)年5月に東洋電機製造・東洋工機で製造された富山地方鉄道デキ19040形19041・19042であるが、発注者は小野田セメント(現太平洋セメント)で富山県の有峰ダム建設のセメント輸送用として一時的に富山地方鉄道に籍を置いていただけで、工事完了後には三岐鉄道へ転出することが最初から決まっていた。そのため、三岐鉄道ED45形1次車に準じた設計で右運転台になっている。
 1960(昭和35)年1月にデキ19041、9月にデキ19042が三岐鉄道に回送され、同年2月にED454、9月にED455として竣功した。当初はこの2輌も借入申請がなされている。

近畿日本鉄道デ31形(33)
 1948(昭和23)年から三菱電機で製造された近畿日本鉄道デ31形31〜33で、当初伊賀線や南大阪線の貨物輸送として活躍したが、31・33が養老線へ、32は改軌され名古屋線へ転属した。車体形状は箱形で神戸電鉄ED2001(現701)などと似ている。三岐鉄道は電機導入に際しこの三菱タイプと東洋タイプで計画していたようで、結局東洋を選択している。
 三岐鉄道は黒四輸送のため養老線からデ33を1960(昭和35)年ごろに借り入れたと思われるが、活躍時期は不明。また、1970(昭和45)年10月から翌年2月ごろに在来機の事故補修ため車輌不足となり借り入れている。近鉄デ31・33は2000(平成12)年11月のさよなら運転を最後に廃車解体された。デ32は塩浜工場入換機として活躍している。

名古屋鉄道デキ400形(401)
 1930(昭和5)年4月と翌年2月に電気機器を米国Westinghouse(ウエスチングハウス)・車体を日本車輌製造で製作された愛知電気鉄道デキ400形400・401で1936(昭和11)年12月に名古屋鉄道と合併した。デキ400は名鉄時代にデキ402に改番されている。当初は黒一色塗りであったが1993(平成5)年に車体を大更新し塗装もブルーになり近代的なイメージになった。
 三岐鉄道は黒四輸送のためデキ400形401を借り入れているが、牽引力不足のため極短期で返却されたと思われる。借入時期は不明。

大井川鐵道ED501形(501)

 1956(昭和31)年1月と2月、日立製作所水戸工場で製造された大阪窯業セメント(現住友大阪セメント)伊吹工場専用線(JR東海道本線近江長岡より分岐)いぶき500形501・502であるが、1999(平成11)年6月、同線の廃止に伴って8月廃車となった。同年10月、トラック輸送で2輌とも大井川鐵道へ転じ、ほとんど改造されるとなく2000(平成12)年3月にED501形501・502として竣工した。
 三岐鉄道は2000(平成12)年7月からの中空輸送で電機不足となるため、急遽501を借り入れ、502を購入することになった。5月にトラック輸送で保々車両区へ回送され、名鉄住商工業の出張工事で重連総括制御・ATS機器を取り付け、6月にED501形501・502として竣功した。尚、重連総括制御改造は501の藤原側と502の富田側のみで、固定編成を組んでいる。ED501が借入機のため右運転台化や塗装変更はされていない。中空輸送終了後は、両方の前照灯を2灯シールドビーム化し大井川鐵道へ返却された。

三岐鉄道の借入機については、諸元等あまり詳しく調査出来ておりません。
詳しい情報をご存じの方、写真をお持ちの方はご連絡(メール)お待ちしております。
 
2016.8.13 更新
主要諸元
形式 車号 最大寸法(長巾高) 自重(t) 主電動機 出力(kW) 牽引力(s) 歯車比 台車
国鉄ED22 222 9170×2670×3955 28.60 WH-556-JF6 68×4 3330 16:73 ブリル系
国鉄ED38 384 12500×2740×3668 56.50 TDK556-A 148×4 不明 25:99 棒台枠
国鉄ED35 353 10250×2650×4000 35.00 SE125B 85×4 4480 19:69 板台枠
国鉄ED21 212 12528×2743×3975 56.00 MT-37 185×4 9600 17:92 棒台枠
富山デキ19040 19041・19042 12800×2600×3955 45.00 MT-40B 142×4 5760 16:73 板台枠
近鉄デ31 33 10800×2700×3810 40.00 MB-280-AFR 128×4 5900 16:73 棒台枠
名鉄デキ400 401 11052×2700×4120 40.00 WH-550-JF6 93.3×4 不明 14:67 板台枠
大井川ED501 501 12600×2704.6×3830 50.00 HS277-Br-16 150×4 9000 16:76 担立台枠
車輌画像
三岐鉄道 所蔵

国鉄ED222
(三岐鉄道譲受後)

1956.10.26

富田機関区

三岐鉄道 所蔵

国鉄ED384

1960.

富田付近

三岐鉄道 所蔵

高井薫平氏 撮影

国鉄ED353

1960.3.2

富田機関区
京福電気鉄道売却後の画像へ

三岐鉄道 所蔵

国鉄ED212

1960.

富田機関区
国鉄返却後の画像へ
参考:長野電鉄ED5000形の画像へ

三岐鉄道 所蔵

高井薫平氏 撮影


富山地鉄デキ19041
(三岐鉄道譲受後)

1960.3.2

富田機関区

三岐鉄道 所蔵

近鉄デ33

1971.2.27

保々車両区
近畿日本鉄道時代の画像へ

大井川鐵道ED501

2001.2.3

東藤原
ED501形の住友大阪セメント・大井川鐵道時代の画像へ

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