信じてくれるかどうかは、ばくちだなと思ってた。私は憲ちゃんにとって対象外の人間、だからえっちなんて絶対にあり得ない。
でも、……もしかしたら。憲ちゃん、すごく落ち込んでるし、これが夢の中の出来事だと思ってくれたらいいかなって。そのために、お酒だっていっぱい飲んでもらったし。
「本当の私だったら、こんなことしないでしょ? 憲ちゃんだって、それくらいわかってるはずだよ。だから平気、今だけ楽しんじゃお?」
すごいな、憲ちゃんの瞳に映っている私はとってもキュートに微笑んでる。蛍光灯のキラキラが反射して本当に夢の中に迷い込んだみたい。憲ちゃんの手のひら、すごく熱い。
「ばっ、馬鹿っ! ……小夏……」
「憲ちゃんからしてくれないなら、私が襲っちゃうよ? それでもいいのかなあ〜」
スウェットを脱ぎ脱ぎさせちゃったりして、今日の私はすごい。なんか、だんだん演技が入ってきて、自分でもノリノリになってくる。
「うっ、うわっ! 小夏っ、……おいっ!」
不意を突かれて仰向けに倒れ込んだ憲ちゃんの上に身体を重ねる。いろんなところがくっついて、もうヤバイ状態。ふふふ、憲ちゃんもちゃんと反応してるじゃない。さっきより、大きくなってるのもわかってる。
「憲ちゃん、私もう我慢できないっ! ねっ、えっちしようよ。……いいでしょう?」
胸と胸を密着させてすりすりしたら、なんだかこっちまで気持ちよくなってきちゃう。
「……はぁんっ、まだ駄目? もう限界だよぅ〜!」
どっちかというと、私はMだと思う。思いっきり迫られて、ちょっと無理矢理っぽいのがいい。だけど、現実はなかなか理想どおりにはいかないものだね。
そしたら――
「うっ、うおおおっ、……小夏っ!」
次の瞬間、いきなりふたりの身体が入れ替わってた。仰向けにされた私の上に、憲ちゃんが覆い被さってくる。
「なんだかっ、よくわからないが! 俺の方も限界だっ、お前が欲しくてたまらないぞ!」
その声を聞いたとき、もうちょっとで泣き出しそうになってた。でもせっかく盛り上がったところで水を差すのも良くないって、必死で堪えたんだよ。
憲ちゃんはほとんど本来の役目を果たしていないスケスケブラをたくし上げると、両方の胸を同時に鷲づかみにした。
「……ひぃんっ……」
もっと優しくして欲しいな、これじゃあ乱暴すぎる。でも、ざらざらの手のひらが肌をさすると、触れられた場所がすごく気持ちよくなる。憲ちゃんの熱気が肌を通して伝わってきて、その直接感がたまらない。
「ずいぶんと育ったな、小夏。つい最近までは、ぺったんこだったはずなのに」
そう言いながらも、揉み揉みの手はノンストップ。そのうちに指の間から飛び出た花色の部分に、ちゅっと吸い付いて。
「ひやぁんっ、……そんなっ、それってずっとずっと前のことじゃない……!」
いったい、いつの時代の話をしてるのよっ。憲ちゃんって、こんなときまでデリカシーがないんだから悲しくなる。悲しい、……でも嬉しい。もっと、いっぱいさすって。そして舐めて欲しいよ。
やがて、憲ちゃんの手は背中からおしりへ。びっくりするくらいの素早さで、その部分を探り当てる。
「……お、もう濡れてるぞ。小夏、お前って顔に似合わずえろいな?」
「ばっ、馬鹿っ! 憲ちゃんのえっち!」
わざわざ口に出して言わなくたっていいじゃない、もうもう全身で真っ赤になっちゃうよ!
「なに言ってんだ、これからもっとすごいことしてやるんだぞ」
憲ちゃん、完全に出来上がっちゃってる。だよなあ、かなり強いお酒だったし。私の倍くらいのピッチで飲ませちゃったから、そうなるのも当然か。
胸におしりに脇腹に太股に……とにかく憲ちゃんの手はせわしなく動いていく。ふたりの間には激しい息づかい、色っぽいというよりはどこか動物的。
でもっ、……すごく気持ちいい。
「憲ちゃん、まだ平気なの? えとっ、すごいことになってるみたいだけど」
指摘していいものなのか迷った。でも憲ちゃんの動きに合わせて私の足に触れる熱くて堅いモノ、それがどんどん張り詰めてる気がする。
「なんだ小夏、お前えらい余裕だな。おっ、俺は……俺はもうっ、訳がわからなくなってるぞっ!」
「ひっ、ひっ、ひゃっ……!」
私の中をかき混ぜてる憲ちゃんの指が、一本から二本へ、そしてもう一本ねじり込もうとするんだからたまらない。そのたびにぐちゃぐちゃ音がするしっ、どんどん溢れてきたモノが床まで流れ出してる。
「けっ、憲ちゃん! なんか気持ち悪いよっ、ぬるぬるになっちゃって……」
まるで腰から下が別人格になっちゃったみたい、全然私の言うことを聞いてくれない。翻弄されるってこういうこと? 快感ってこの先どこまで続くの?
「小夏……そろそろいいか?」
ちょっと待ってろ、って言うと、憲ちゃんは一度私から遠ざかる。
どうしたの? って思ってたら、お財布からなにやらごそごそと取り出してた。ええと、それは……いわゆる避妊具って奴でしょうか。
「……そんなの、持ち歩いてるの?」
それって、いつえっちな状況になっても構わないってことだよね? なんか、ちょっとショックかも。
「当たり前だろ、男には制御不能になっちまうことがあるんだから。そんときのために、これは最低限のマナーだ」
四角い袋の切り口がなかなか開かないみたい。丸裸のまんまで床に投げ出された私は、なんとも格好悪いなあ。そして袋を被った憲ちゃんのも、育ちすぎたナスみたいに見える。
「おい、そこだと背中が痛いだろ」
同じく裸ん坊の憲ちゃんが、私をよいしょっと持ち上げてくれる。そしてふたりでベッドの上に。そこでようやく初めてのキスをする。
「……憲ちゃん」
その瞬間、いろんな想いがこみ上げてきてたまらない気分になる。
「このまま、来るか?」
憲ちゃんがあぐらをかいて座ったその膝の上に、ひょいっと乗っけられた。そして高い場所に抱き上げられたまま、少しずつ腰を落としていく。
「……ひっ、ひゃああああっ……」
なんだ、これ。すごい異物感。というか、憲ちゃんのって大き過ぎじゃない?
「大丈夫か、無理するな、……ゆっくりでいいんだぞ?」
とか言われても、これは重力の問題。私の意思に関係なく、どんどん袋入りの憲ちゃんが中に入ってくる。
「あああ……、けっ、憲ちゃあんっ……!」
汗でぬるぬるになった背中に必死で腕を回して、私はどうしようもない気持ちをどうにか抑え込もうとした。予想ではもうちょっと気持ちよくて幸せになれるかと思ったんだよね、でも現実はどこまでも非情だ。
「あったかいぞ、小夏。お前の中にいると、とんでもなくいい気分だ」
どこまでも酔っぱらいな憲ちゃんは、シラフだったら絶対に言わないようなことを口にして私を喜ばせる。苦しいのにきついのに、それなのに嬉しい。
「……憲ちゃんっ、動いていいよ? もっといっぱい、気持ちよくなって……?」
この台詞を言う間も、ぜいぜいと肩で息をしている私。でも、とてつもない達成感に身体が包まれてるから、不思議と恐怖はなかった。
「大丈夫か?」
「うん」
無理に笑おうとしたら、ちょっと歪んだ顔になった。憲ちゃんは私の腰に手を当てると、しばらくは赤ちゃんを抱っこして揺らすみたいにゆっくりゆっくり動いてくれる。でもそれだけでもかなりの衝撃で、私は耐えきれずに背中を反らす。そうすると、おもむろに胸に吸い付かれて、それがまたこそばゆくて気持ちよくて。
「やっ、やあっ、……憲ちゃ〜ん……」
もう限界、って背中からベッドに倒れ込むと、憲ちゃんは繋がったまんまでその上に覆い被さってくる。そして、動きやすくなったのか、ずんずんと勢いよく腰を動かし始めた。
「小夏〜っ! 小夏〜っ!」
憲ちゃんの声、なんだかサイレンみたい。全然色っぽくないんだけど、それでも私の名前をたくさん呼んでくれるのが嬉しすぎ。だから、私も負けずに連呼した。最後には叫びすぎて喉がかれちゃうくらいに。
「……うお〜……っ!」
最後は、ものすごい雄叫び。それをすごく遠くで聞きながら、私の意識もそこで途切れた。
つづく♪ (110819)