子供の頃、夏休みはとても嬉しく、かつ退屈な期間であった。ラジオ体操も夏休みの宿題も、学校のプールへ通うことも好きではなかった。ひたすら、壁に向かってボールを投げ続けていた記憶があるし、高校野球に見入ってもいた。旧盆の時期だけ佐久間の山の中のお袋の実家に行くことだけが、唯一の楽しみであったことが思い出される。そのくせ、今小学生になった子供に、
「宿題をやってしまえ」
「プールに行け」
とつまらないことを言っている。それは、何をどう遊んでいいのかを親に聞く癖のある子供たちに、自分で考えろ、と言い放った後の不安をかき消すかのような言葉だ。 　保育園に通う三女すら、
「バッタを捕まえて」
と頼みに来る。草だらけの畑なのだから、草むらを歩けばいくらでもバッタは出てくるというのに。
「自分で捕まえろ」
と言いながら、結局バッタを捕まえてしまうのだから、親馬鹿とはこのことを言うのであろう。万事がこういう具合で、子供の夏休みに振り回されている。振り回されてそれでよしとするような仕事であるのは、夏のくそ暑さに気持ちが萎えているからでもあろう。