春の端境期は四月である。アブラナ科の野菜が菜の花を咲かせる時期で、初春に葉ものの種をまかない賢明な農家は、その頃が端境期で売る野菜がなくなるのだ。その分、一年分の種播きや植え付けができるから、端境期は端境期のままにしておくことが、からだを壊さない秘訣だ。うちは賢明な農家でないので、ビニールハウスも使わないくせに、四月が野菜の売り上げ一番である。正月過ぎから葉ものの種を播いているからそうなるのだが、おかげで四月の重要な作業が滞ることが多くなった。一番の犠牲者は、田んぼで自家用のお米をまかなっている僕たち自身であろう。今年も、見事にお米が不作だ。自業自得ってやつだ。
そして、今が秋の端境期にあたる。この頃は、暑すぎて葉ものが育たない。夏野菜ばかり売っている。葉ものはモロヘイヤくらいのものだ。これが、まだしばらく続く。葉ものもレタス類も十月になれば出てくるであろう。七月の後半から葉ものが激減し、二ヶ月間も夏野菜と玉葱、ジャガイモなどの貯蔵野菜だけを食べていることになる。野菜を買ってくれている方々には申し訳ない気持ちで一杯だが、僕たちの信念と旬そして天候不順の上に立つと、ほかの選択肢がない。それでも、うちは葉ものがあるほうなのかもしれないし、九月に入ってからは玉葱のよく売れること売れること。この地方の無農薬多品目農家は皆端境期であり、玉葱を多く作付けなかったところは、早くも玉葱すらなくなって野菜が不足し、品目合わせに奔走しているのであろう。だから、玉葱がよく出る。
先の台風以来、雨がなかった。正確には、ポツポツ程度の雨が降った時もあるが、畑が潤うことはなかった。太陽の陽射しは、直接地球に降り注ぐようで、めっぽう熱く痛い。畑はからからである。こんな時に、無理して葉ものを畑に植え付けても、確実に育たない。だから、無理はしないできた。だが、十月初旬に葉ものを収穫するには、今植えつけなければならないし、葉ものの苗も老化してきた。それどころか、その次の葉ものの苗ももうすぐ定植適期となってしまう。熱い暑い日々が続く。畑の準備だけ、着々とすすめてきた。天気予報でかろうじて雨の気配を察知し、夕方日が翳ったところで、満を持してトラクターで畝立てをはじめた。涼しい。太陽さえ隠れたならば、とにかく涼しい。季節は季節どおりなのだ。太陽をさえぎるオゾン層が破壊されているだけなのかもしれない。これは、大きなことだが。移植機で、さっと葉ものを定植できた。ざっと、植え付けミスの手直しをして、サンサンネットを畝上に被覆し終えた頃は、もう真っ暗。
翌日まで雨はなかった。ここから、三キロメートルほど北までは、土砂降りの雨があったようだが、何といっても海岸沿いのここは亜熱帯だ。雨が来ない。よくあることだ。もう一度インターネットにかじりついて、天気予報を注視した。雨が今度こそ来そうだ。植えつけた葉ものの隣の畝に生分解マルチフィルムを張って、冷蔵庫からキャベツとブロッコリーの苗を出してきた。トレーごと、水に漬けて、そのまま手作業で植えつけ、サンサンネットを張り終えて、またもや真っ暗。夜は、雨になった。寒いほどの秋の夜になった。秋の端境期を、こうして僕たちは乗り切っていくのだ。我慢の日々もまたよい。
2005年9月15日 寺田潤史
(すべて無農薬無化学肥料栽培です)
新着 野菜 品種名 科 種播き日 収穫開始日 1 なす 黒陽、万寿美 ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月20日から収穫 2 ピーマン 京波 ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月23日から収穫 3 ししとう つばきグリーン ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月26日から収穫 4 玉葱 七宝甘70 ユリ科 2004年10月15日播種 2005年5月25日から収穫 5 オクラ いちばん星 アオイ科 2005年6月27日播種 2005年8月7日から収穫 6 ニラ スーパーグリーンベルト ユリ科 2004年2月2日播種 2004年4月6日から収穫 7 じゃがいも メークイン ナス科 2005年2月22日播種 2005年5月23日から収穫 8 葉ねぎ わかさまパワー ユリ科 2005年3月29日播種 2005年7月25日から収穫 9 インゲン 黒種衣笠 マメ科 2005年2月27日播種 2005年5月23日から収穫 10 青しそ (自)青しそ シソ科 自然発芽 2005年6月24日から収穫 11 モロヘイヤ 自家採種 シナノキ科 2005年3月18日播種 2005年7月1日から収穫 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 卵 赤鶏 平飼自然卵
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