瞬く間にお彼岸も明けてしまった。かすかな雨を頼みに、大根の種を播き、法蓮草の種を播き、こかぶの種を播き、遅い人参の種を播いて、もう大方芽が出揃った。そのほとんどの畝にネットの類が被せられている。苗の成長が悪いのは初めてといっていいくらいの白菜の苗も、生分解マルチフィルムにかろうじて植えつけられて、唯一の砂地の畑である「ちーち畑」にも安堵感が拡がっている。お彼岸を、寒暖の差の激しいうちに取り逃がしたかのようで、なんだか忘れ物をしているような気分だ。お墓参りにも行けなかったのは、子供たちが交代で熱を出したことも一因だが。
日長と関係するので、玉葱の種だけは、毎年決まった時期に播いている。もうほぼ終わりだ。あとは、十月の十五日頃に二月植えの玉葱の種を播くだけだ。であるから、ここからは玉葱の苗を育てるほうに気を回すことになる。極早生の玉葱は、発芽率が異常に悪い。超極早生の玉葱の種が今年は回ってこなかったから、極早生の玉葱の収穫期が重要になる。でも、それは四月の初旬のことだ。つまり、それまで貯蔵種の販売を持たしていかなければならない。玉葱の周年供給は、執念に近くなってくるくらいのものだ。そして、極早生種を大事にしないといけない。さらに、早生種へとつなげることまで考えなくちゃいけないので、そういうことをイメージして苗を育てることになる。
急に涼しくなったことで、からだが実によく動く。涼しいから、夜もぐっすりと眠ることができる。これが、からだの動く原因で、からだが動けばお腹も減る。ようやく収穫の始まったサツマイモを恭さんが料ってくれると、お腹のすいた夕方にはごちそうだ。そして、また夜にかけて玉葱の種を播くという日々であった。涼しくなると、恭さんのおやつ調達の意欲もぐんと増す。牛乳が残っていたならば、ホットケーキというおやつにもなるし、ヨーグルトが残っていたならば、コーヒータイムのお供に化ける。僕には真似のできない芸当だが、恭さんがおやつを仕込んでいる間に、僕は玉葱の種を播く培土を仕込めるし、鶏の餌も仕込める。植えつけた葉ものや芽の出た大根やこかぶにもネットを被せることができる。堆肥をまいて、トラクターで耕すこともできる。出荷用の玉葱の調整もできるし、音楽にも関わることができる。年中働いているのだから、こういう涼しくなって忙しい時期にあえて豊かな暮らしに時間を割くこともよい。
九月は一つの正念場であるが、毎年変わらずに乗り切ることができるのは、涼しくなってからだが楽になることも要因のひとつではある。何よりも、正念場に玉葱の季節の始まりがこの下旬になって登場するところが、正念場の緊張感を保ってくれているのかもしれない。もちろん、週末には稲刈りもあるから、仕事の多さにひるんでいられないのだが、一方で新しいサツマイモの収穫が味覚に新鮮さを加えてくれる。これが、人間の軽やかな動きの中に微妙に入ってくる。そういう季節に玉葱の種播きが始まる。この因果、季節の中にいるものにとって、味わいの深いものである。そして、遅れてはいるが、もうすぐ金木犀も香ってくるであろう。神社のお祭の季節へと突入し、こうして瞬く間に、秋は深まるのであろう。
2005年9月29日 寺田潤史
玉葱の種を播いて芽の出かかったトレー。
そのトレーを、高畝にして平置きし、土に埋め込む。
(すべて無農薬無化学肥料栽培です)
新着 野菜 品種名 科 種播き日 収穫開始日 1 なす 黒陽、万寿美 ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月20日から収穫 2 ピーマン 京波 ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月23日から収穫 3 ししとう つばきグリーン ナス科 2005年1月12日播種 2005年6月26日から収穫 4 玉葱 七宝甘70 ユリ科 2004年10月15日播種 2005年5月25日から収穫 5 オクラ いちばん星 アオイ科 2005年6月27日播種 2005年8月7日から収穫 6 ニラ スーパーグリーンベルト ユリ科 2004年2月2日播種 2004年4月6日から収穫 7 じゃがいも メークイン ナス科 2005年2月22日播種 2005年5月23日から収穫 8 葉ねぎ わかさまパワー ユリ科 2005年3月29日播種 2005年7月25日から収穫 9 インゲン 黒種衣笠 マメ科 2005年2月27日播種 2005年5月23日から収穫 10 青しそ (自)青しそ シソ科 自然発芽 2005年6月24日から収穫 11 モロヘイヤ 自家採種 シナノキ科 2005年3月18日播種 2005年7月1日から収穫 12 New さつまいも 紅東 ヒルガオ科 2005年9月27日から収穫 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 卵 赤鶏 平飼自然卵
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