僕は言う。

「テレビっていうのはね、確かに情報のひとつであることは真実だ。だけど、例えば千の情報があるのならば、そのうちの一つだから千分の一に過ぎないのだよ。テレビで情報をもらって、君の衝動の一つのきっかけとなったのならば、そのほかの九百九十九の可能性をさぐるべきだし、そこから自分の意思との合流点を見つけていくことが大事なことだ」

「基本はいつだって大切なものに変わりはないが、そこから自分らしさを求めて常に変化していくことが重要なんだ。世の中の流行のベストテンを眺めて安心していてはだめだ。それは、常に業界の一つの形に過ぎない。みんながいいと思うものがいいと思っているだろう？そうではなくて、自分が本当にいいと思うものを、自分の価値判断で決めていかなければ、いつまでたっても他力本願だよ」

「ひとつのことを続けていくのに、ほめられないとやる気がなくなってしまうというが、ほめられてもほめられなくても、自分の意思だけが重要なんだ。ほめられると自分を見失いがちになるから危険だね。自分の意思を継続するには、常に自分が変化していかなければならない。自分が変化することは、平穏でないところに身を置くことになるから、一つの不安定要素が生まれるが、そこからまた安定要素で解決して、次のステップに移っていくことになる。ほめるならば、その日の分だけ自分をほめてあげてね」

　「どうしてこうも日本人というのは、一つの形がよいとなると、その形を模写したものに飛びついて、それを何々風といって評価したがる人種なんだろう？自分の中をもっと解体して、自分固有のものを評価していく態度に欠けている。何々風というものは、決して基本要素にはならない。もっと単純に、自分はこのやり方が好きだ、を通していいと思うよ」