ひらく農園レーベル事業部より草子のＣＤ「草子2007水たまり」2007年4月1日発売！！
アマゾンでの取り扱いも開始しました。

毎日更新の「週刊てーて」＋αをブログでどうぞ（携帯QRコードはこちら）。

週刊てーて　ひらく農園から

「需要過多」

　毎年、八月になると夏野菜も盛夏を迎える。収穫最盛期となり、収穫量はピーク。その頃にお盆に入り、お盆が終わるころには、夏野菜の樹は疲れ、供給不足に陥る。それが今年は違う。今すでに供給不足。これは、夏野菜のピークの前に、台風が来て全国的に野菜が高値になった、という状況が加味されているのだろう。台風四号が来たあと、うちのナスはぴたっと収穫量が頭打ちになった。回復していない。しかし、注文は逆に多くなっている。

　恭さんが言う。
「毎年、今頃はキュウリやナスが余ってしょうがないくらいなのにねぇ」
確かにそういう状況が何年も続いてきた。そして今年のうちの状況は、ジャガイモと玉葱の収穫が尾を引いて、キュウリの追い播きに力を入れられなかった。いつもガンガン種を次から次へと播くキュウリだが、どこか僕の心の中で、
「どうせ余るのだから」
という気持ちがあったのだろう。いや、正確に言えば、玉葱とじゃが芋で疲れてしまった、というのが本音かもしれない。

　キュウリやナスが、たくさん収穫できないで、しかし需要が多い。仕方なく単価を上げる。例年なら考えられないくらいだ。単価を上げたら注文が減るだろう、と予測すると、逆に増える。そのくらいに、市場の値上がりが厳しいのだろう。普通、慣行農家は市場価格が上がると気色ばんで、目の色を変えるものだが、僕たちのような有機農家は、ちょっと趣が違う。注文が増えるならば嬉しい思いをするが、野菜が不足するとあちこちの注文のやりくりに困窮するのだ。注文が多くても、収穫できる野菜がなくてはお話にならない。かといって、注文がないのに野菜が多くてもむなしいだけなのだ。ここが難しいところで、農家の腕の見せ所だろう。

　東京の八百屋さんで、ようやく地這キュウリの味の良さをわかってもらえた、という。とても嬉しいことなのだが、今市場に出回っているのは、まったく別物のキュウリだ。僕が地這キュウリを作付けるのは、栽培や収穫、種の価格のこともあるにはあるが、やはりあの味である。色味という料理人の希望を排し、形という野菜を売る人の希望を排し、味一本に絞った時の、あの昔ながらの味。西瓜にしても南瓜にしても、マクワ瓜にしても、田舎の雰囲気をそれだけでかもし出す、それは地面に這う形から生まれ出た味なのだ。これは、バブルよりも深い歴史を持っている味だ。その地這キュウリの種を次から次へと播けなかった自分の体力を反省している。夏の日課は、毎朝の腹筋である。多品目農家にとって、ましてや亜熱帯農家にとって、夏を越すことはそれだけで大変なのである。需要過多の今、あわてて種を播いたところで、せいぜいひと月、ふた月先に成果は現れるくらいなのだ。