「たまねぎ、じゃがいも、にんじん」

　今年の冬野菜はこけた、と言ってもいいくらいに近年まれにみる失態である。まず、白菜がない。これは、遅い収穫ということでもなく、ほとんど皆無に近い。遅く播いた白菜も、十一月だったか？あの時の大雨でいっきに枯れた。残っている白菜は、菜の花になるだろう。その菜の花も、例年に比べて極端に少ない。そして、大根が遅かった。異常に遅かった。十二月の終わりになって、ようやく大根を収穫できるようになり、今やっと大根が豊富にある状態になってきたところだ。

　この失態は、しかし、防ぐことのできるようなものではなかった。亜熱帯に近いこの畑では、温暖化ということ自体が厄介な代物である、と言えるだろう。一方、あまり厄介であるとも思っていない自分にも気付く。それは、「たまねぎ、じゃがいも、にんじん」という常備野菜の力によるものだ。去年の今頃、この三種類に力を入れる、ということを確認したことを思い出す。そのことが、今になって力を発揮してきているのだ。

　たまねぎは、収穫時に、「こんなに収穫できてうれしい悲鳴に違いないが、果たして売り切れるのだろうか？」と半信半疑だった。夏になっても冷蔵庫に満杯のたまねぎを見て、やはり「本当に売り切れるのかな？」と思っていたくらいだ。それが、この時期になって、「足りるかな？」という具合に変わってきた。それだけたまねぎを売った、ということになる。そして、今畑に植わっているたまねぎを、何としても豊作で収穫にこぎつけたい、という気持ちにさせる。それは、去年以上に収穫できても大丈夫、いや、去年以上に収穫できなければ来年の今頃、たまねぎの不足を憂うことになる、そんな思いからのことである。これだけたまねぎを使ってくれる顔の見える関係があるのだから、「期待に応えたい」「もうありませんとは言いたくない」などと欲を出しているわけだ。

　じゃがいもも、冷蔵貯蔵のおかげで、ずっと出荷し続けている。まだまだ在庫はある。じゃがいもの貯蔵温度は３．５度という設定温度が最適であると、冷蔵庫屋さんから頂いた紙には書かれている。一台しか冷蔵庫がなかった去年は３度で春先まで大丈夫だった。３．５度の設定ができる新しいほうの冷蔵庫にじゃがいもを入れてあるのだが、通気むらのできる場所に置いたものは、多少芽が出てきてしまった。あわてて通気を良くし、設定温度も３度に下げた次第である。じゃがいもは、６月に収穫してずっと冷蔵庫の中だ。そして、この時期から少しずつじゃがいもにしわのできるものが出てくる。水分が抜けていくのだ。少し見栄えが悪くなるが、味は格段に良くなっていく。常に新しいじゃがいもばかり食べている人には、この味は堪能できない。慣行農法のじゃがいもでは、ひょっとしてここまで貯蔵できないのかもしれない。冷蔵庫屋さんから頂いた紙には、じゃがいもの貯蔵期間は２か月、と書かれていた。どんなことも、やはり自分の目で確認していかなくてはいけないね。有機野菜の貯蔵温度の最適なところは、業者さんではわかりえないであろうし。

　にんじんもおかげさまで豊作なこの冬である。