「たまねぎ、じゃがいも、にんじん　その二」

　ニンジンが豊作であるとはいえ、年が明けてから意外に雨が多く、割れたニンジンが多くなってきた。また、秋の温かさが続いて虫が年末まで見られ、ニンジンの根部を少し食べられているものも多い。僕たち生産者と個別のお客様の関係も、大規模店舗でないところのレストランや自然食品店などの業務用卸という関係など、顔の見える関係を長年続けている。自然食品店などの見栄えを気にするところには出せないが、こういった虫食いや割れなどを包丁で切り落として買っていただいてもいる。調理する分には全く問題がなく、味もいいのであるが、顔の見える関係とはありがたいものだ。割れのひどいものをそのままの状態で売るわけにはいかないし、虫食いの目立つものを除去しないで売るわけにもいかない。そこのところの良し悪しは、昔スーパーマーケットで数年働いていた経験が役に立つ。マーケットでは大根やキャベツは平気で包丁を入れて小分けして売るし、ちょっと傷んだような部分はほんの少しだけ包丁を入れれば除去できるから、最後までできるだけ野菜を売り切る、ということをしていた。そこのところのさじ加減は、やはり経験が必要になってくるのかもしれない。

　現在出荷している玉ねぎの品種「ターザン」は、痛みが少ない。二月いっぱいまで冷蔵貯蔵できるとされる「ターザン」だが、痛みが少なく出荷しやすいという点で、貯蔵玉ねぎの中でもトップクラスのものだと思う。ハサミで、下の根を切り、上の枯れた葉の根元を切り落とすと、傷んだものであってもすぐに識別できる。皮を一枚向かないと識別できない品種もあるので、「ターザン」は本当に農家想いの品種だ。ニンジンだって、痛みや割れがないものばかりなら、作業はかなり楽になる。ここは、品種を在来種に限定したので致し方ないところだ。玉ねぎの「ターザン」も、もうすぐ終わりだ。今月いっぱいくらいであろう。来月からは最後の「もみじ３号」になる。３月いっぱいもってくれるといいのだが、この頃はまた玉ねぎの注文が多いのである。

　去年、玉ねぎとジャガイモのために冷蔵庫を一台増やした。２．５坪で１００万円弱（電気工事代含む）の投資である。玉ねぎが去年の３月２３日頃から収穫でき始め、じゃがいもは５月の初旬からであった。そこからこの１月までに玉ねぎとジャガイモで、その投資分を販売できた。現在冷蔵庫に残っている在庫で、玉ねぎやジャガイモの種代金や堆肥代金、生分解マルチフィルムの代金、人件費と光熱費を回収するのである。もちろん、玉ねぎやジャガイモだけを売って生活しているのではない。多品目農家であるのだから。それでも、これらの柱となる品目は、僕たちにとっては重要なものだ。そして、やはりこれら玉ねぎやジャガイモやニンジンといったものを、多くの人たちが日常的に調理していることも裏付けることができるだろう。特に精力的に玉ねぎやジャガイモやニンジンを売りに歩くわけではなく、注文が多いのである。

　玉ねぎやジャガイモ、ニンジンという柱は、これからも続くと思う。何といっても、５番目の長男が成人するのには、まだあと１８年強を待たなければいけない。５人を育てる原動力となるのが、これらの柱の品目なのである。そして、それらに続く品目群である葉もの類の種まきも始まっている。春の端境期を野菜満載にするために。 。