「遅き台風」

　先週までの乾燥を、遠いところにある台風が前線を刺激して、雨の日々へと変化させた。その台風十三号は、ずっと南の海上を台湾めがけて北上し中国方面に進むと思われたが、台湾を過ぎたあたりで一転して直角に曲がった。そして今、九州近くの南の海上にいる。明後日の早朝には、このあたりを通る予想だ。今年は、常に台風が、進路を変えてくれて助かってきた。早い時期の台風がいくつかあったが、その後、台風がこちらにやってきそうな気配はなかった。ようやく、季節のものが遅れてやってきた、そんな印象だ。

　畑のニラの花は、今が花盛りである。いつもの年であれば、お盆過ぎあたりに花盛りがやってくる。それが、ひと月近くも遅い。そして、やはり八月後半にやってくる台風が、ようやくやってくる。例年ならば、八月後半の台風の雨をねらって、ニンジンの種まきをする。台風が来なけりゃ雨がやってこない、そんな八月後半が通常であった。今年は、季節が遅い感じがするので、二回目のニンジンの種まきを、大幅に遅らせた。そして、先日の雨で芽が出てくれた。真夏と違って、涼しくなってきたので、すっと芽が出てくれる。

　秋じゃがも、種イモの植え付けを遅くした。雨の前に、種イモを植え付け、紙マルチを張っておいた。この秋初めての大根の種まきは十五日であった。二日で芽が出た。あわてて、堆肥を畝の上に置いた。ネットを掛けて、雨を迎えた。二回目のほうれんそうの種もまいた。超極早生の玉ねぎの種もまき、もう芽が出かかっている。来週には、本格的な玉ねぎの種まきがはじまる。

　葉ものの種まきは、もはや毎週のことになる。今夜も、葉ものと、二回目の白菜の種播きだ。秋は、何かと行事が多い。運動会、秋祭り、子供会の行事など、農作業（種まきや苗の植え付け）と重なり、なかなか息つく暇がない。そんなとき、台風がやってくると、農作業は否応なく一息つく。仕事のしわ寄せが出てしまうが、どこかで休まないといけない。去年は、秋祭りで熱を出して、秋祭りを棒に振った。

　子供たちは、小学校の運動会の練習で舞い上がっている。そんなに運動会が楽しみなのか？僕には、ちょっとピンとこない。その運動会も、台風の影響でこの土曜日の予定は延期となってしまうだろうか？今の時代の子供は、どうも官製の行事に組み込まれることを楽しみとする、そんな性質がある。田舎だからか？それとも、僕個人的な性質として、学校の行事の背景に教育委員会というものを感じてしまう、過敏症が存在するのか？それでも、何事にも頑張る、という姿は好きで、ビデオに撮ることが僕の楽しみである。おっと、月曜日に延期されると、出荷の影響で、ビデオに収まらない種目が出てきそうである。ひと工夫しなければいけないね。

　その運動会予定日は、もう彼岸の入り。長い夏をまだ引きずっていてはいけない。もう、季節は冬の前触れである。人間社会の喧噪、秋の虫たちの喧噪、それらに一喜一憂している間にも、地球の大きな流れは止まらない。台風をはじめとする人間にはどうしようもない自然現象に対して、何とかやり過ごす、一匹の虫でありたい。

2008年9月18日　寺田潤史

最初に播いた人参は順調だが、若干まばら。

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