「寒風と種播き」

　真冬の冷え込みが連日続く。農作業の中で最低限必要な収穫作業などをこなせば、その他の仕事が困難である、そのくらいの寒風が容赦なく吹く。ただの冷え込みなら、比較的仕事というものはできるものだが、このきつい風があるかぎり、制約が出るのは致し方ない。薪ストーブを焚いて納屋を温め、収穫を一品目こなしては納屋に飛び込む、その繰り返しだ。冷たい水の入ったバケツに素手を突っ込み、暖かいお湯を注いだバケツに又素手を突っ込む、そのお湯と同じことを薪ストーブで温めた納屋がやってくれるのである。

　年末年始からずっと葉ものの売れ行きは好調で、このままではあんなに豊富にあった葉もの類が三月初めには無くなってしまいそうだ。それで、とうとう今年の種まきを開始した。何事も、仕事というものは連動性が必要なものだから、種まきを始めるということから派生する作業もこなしていかなければいけない。種まきをするには、種まき用の培土が必要だから、まず培土の仕込みを行った。そして、納屋を種まきのできる体制に整える。そうして、種まきをし、ぬるま湯でかん水して、種を播いたトレイを発泡スチロールに入れ、暖かい納屋に一時収納する。発芽までの２日ほどの時間に、今度は苗床の準備をする。

　例年であれば、昨年までの苗床をそのまま使うから、ビニールを覆って、電熱線のスイッチを入れればよいのであるが、今年は苗床が古く老朽化して保温性を維持できなくなったので、作り直すことにした。場所もひと畝分移し替え、一段下がった場所に移動。寒風対策も考慮して、何とか苗床を新設できた。今まで三〇メートルあった苗床を、十八メートルに縮小して、保温性を上げた。トレイ六〇枚分を電熱線利用の保温ができることになるので、もう一つ電熱線なしの苗床を用意しておくつもりだ。あとは、トレイを移すばかりである。

　寒風が吹きすさぶとき、子供たちの世界では、風邪が流行ったり、インフルエンザなども伝わってくるものだ。インフルエンザは、子供の友達のところまでは来ているが、まだうちにはやってきていない。一足先に、末の長男のところに嘔吐下痢がやってきた。ゆうべ元気な長男と一緒に眠ったのだが、夜中にいきなり吐いてしまったのだ。洗面器などは当然用意してなかったので、すべてを僕の体の上に吐いた。僕は体全体で受け止め、何とか恭さんを起こしておさめた。夜中にもう一度吐いたが、今度は洗面器におさめた。熱はないのだが、今日は大事をとって保育園を休ませた。案の定、保育園では嘔吐下痢が流行っているらしい。

　熱はなくとも元気いっぱいとは違うし、一日食事らしいものも与えずにおくのだから、手はかかる。僕か恭さんのどちらかが付きっきりに近い状態で、作業ははかどらない。昼間の配達に恭さんが長男を連れて出かけ、その間に、苗床の新設をこなした。恭さんの家事の間に、僕が長男を抱っこして寝かせ、本を読むことができたのはひと時の休息ではあった。夕方には、ファーマーズマーケットで葉もの類が売れたことがわかり、あわててまた葉もの類の収穫に行き、明日早朝の出荷に備えた。冷え込みでストーブに使う薪の量も多く、薪作りも並行して行う。相変わらず、綱渡りの仕事ぶりだ。

2009年1月15日　寺田潤史

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