「春に向かえるかな？」

　長男の嘔吐は、一日の休養で回復し、そのウィルスをもらったであろう三女の嘔吐も一日の休養で回復した。しかし、小学校では、インフルエンザが流行っている。三女のクラスでは、七人が学校を休み、そのうちの四人がインフルエンザであるそうだ。三女は、マスクをして学校から帰ってきた。春に向かうには、このインフルエンザの波を乗り越えなければいけない。

　畑仕事は、寒さと雨で、あまり進んでいない。種まき作業は、引き続き精力的に行っている。先週、葉ものをトレイ十二枚、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーを十枚播いたが、今週は、次の葉ものを十二枚、葉ねぎを八枚播いた。来るべき四月五月の葉ものの嵐の出荷に備えているのだ。先週播いた葉もの類は、もう青々として、新しい苗床で芽が出ている。新しく作った苗床を横目に、古い苗床の片づけはまだ途中だ。半円の支柱や、ネット、シート、古ビニール、押さえのブロックなど、苗床というものは資材の塊である。老朽化したものは、新しいものに取り換えなければならない。十年くらいはこれらの資材のお世話になったのだ。こうして片づけて、次の運命となる通路として生まれ変わる。こうしたことも、冬の大事な仕事の一つである。

　今日は、定年退職をして農業を志した男性が、奥様とともに畑の見学に来た。昨年の三月に定年退職をされ、二年前から準備をしてきた農の世界に入ったばかりだという。おからだも患った経験があり、できれば無農薬で、との思いのようだ。聞いてみると、肥料は化成肥料を使われているとのこと。それでは虫を呼んでいるようなものだから、無農薬では難しいですよ、と畑を見ながら伝えた。見るもの、聞くもの、すべてが目新しいものばかりのようで、とても少ない時間で説明できるものではない。

　うちの畑を見学に来られる方は、ある程度の経験のある方が多く、今日のようにまったく新規に近い感じの方は久しぶりのように思う。やはり、年齢関係なく、自分でいろいろな情報を得て、そこから実践する、ということは大事なことだと思う。通りいっぺんの農協の菜園講座を有料で受けたところで、化成肥料などの受け売りをされるだけだ。そうした失敗もまた自分の身になるものであるが、そこから独自に工夫し、壁に突き当たり、そうして人に尋ね、少しずつ理解を深めていくには、土とともに成長する年月が必要である。最低十年間は土に教えてもらわなければ、浅いものになるであろう。

　僕も途上である。春に向かう期待と不安は、毎年変わらない。プロ野球でいえば、キャンプに入ろうとしている感覚であろうか？冬は、野菜の貯金で食っているようなもので、秋の作付の積極性の恩恵を受けているにすぎない。春に向かうとき、今年の展望も開けてくる。どの野菜に重点を置き、季節の寒暖を見極めて、作付け時期を決定する。気持ちは意気込んだとしても、体はまだゆったりと始動する程度だ。長丁場の一年のスタートが、春なのである。アカシヤのつぼみも、菜の花のつぼみも、春を咲かせようと秒読み段階だ。昨夜からの雨は、もう二十ミリも降り、気温も六度から十一度の間を行ったり来たり。明日はぐんと気温も上がり、週末には逆にまたぐっと下がる。三寒四温を重ねて春は発車しようとしている。

2009年1月22日　寺田潤史

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