「サツマイモの伏せこみも遅く」

　相変わらず冷たい風が吹く。四月に入っても冷たい風が突風のように吹く。桜が咲いても、冷たい風が切り裂いていく。昼間の日差しは、かなり熱い。この日差しだけを見ているのなら、サツマイモの伏せこみ(植えつけ)はもっと早くしていただろう。でも、冷たい風は、数週間たってもいっこうに吹きやまない。そのために、とうとう四月二日という最も遅いサツマイモの伏せこみとなった。

　昨年、少し作付を増やしたサツマイモだが、売れ行きもよく、もう在庫はない。定期の野菜のお客さんのところには、今年に入ってからあまりサツマイモを野菜セットに含むことができなかった。注文が多かったのである。今年は更にサツマイモの作付を増やさなくてはいけない、と意気込んでいる。それで、今日の伏せこみの本数も、例年より１．５倍程度多く九十二本となった。

　サツマイモの苗は、種イモの伏せこみ本数を多くすればそれだけ多くツルとりすることができる。が、早く伏せこんで、早く植え付け、回転をよくすることでも、ツルの数を増やすことができる。ツルが伸びたら切って植え付け、またツルが伸びたら切る、という繰り返しである。そのかわり、一度に植え付けるツルの数は少なくなる。伏せこみ本数を多くするということは、それだけ良質の種イモを多く貯蔵できる条件が必要になる。今年は、その条件にかなったということだ。

　サツマイモの品種は次の通りだ。人気の高い順に、鳴門金時、安納芋、にんじん芋、べにあずま、紅小町、寿、の六種類。種子島紫は、この畑には合わないのでやめてしまった。最後の「寿」もよい品種で貯蔵性も上々なのだが、長い芋になる確率が高い。去年、じゃがいもと兼用で、収穫機を導入したので、長くなる品種の芋は、機械がイモを切断してしまう確率も高くなる、という機械本位の事情で、伏せこみ本数を減らした。鳴門金時は別格として、安納芋、にんじんいも、紅小町は、この畑に作付けると、芋が長くならない。機械本位でも、人気が高いのである。

　安納芋の人気には驚いた。定期購入の長いお付き合いの方々、自然食品店などでは、それほど熱烈な支持を受けるわけではない。しかし、ファーマーズマーケットに去年初めて出品して、事情が変わった。ダントツに売れる品種なのである。熱狂的なファンが存在する品種、と言っていいだろう。ブランド力というよりも、その味に魅せられた方が多いということであろう。ほくほく感よりも、独特の甘みが支持されたということかな？１ｋｇあたり５５０円という値段を維持して、それでも売れたのだから。紅小町などは、１ｋｇあたり４００円である。もっと作付けを増やせば、単価も下げることができるかもしれない。

　売れる、ということは、人をポジティブにさせるものだ。サツマイモが売れる、なんて、田舎では考えにくいことだった。売れる、ということで、次の作付への意欲をイメージしやすくなる。さらに、サツマイモという誰でもが家庭菜園で簡単に育てることができてしまうような品目でも、やり方ひとつで違いを出すことができる、というのも面白みがある。遅い伏せこみではあるが、そこにマイナスのイメージはない、というところが気持ちいい。

2009年4月2日　寺田潤史

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