「世代の悩み　その四」

　自分の仕事や自分の子供のことを常日頃考えるのは、誰しも当たり前のことである。そのことに一番近いこととして、親など身内の存在がある。そのこともまた、五十歳になろうとしているような世代には、大きなこととして日常に付随してくる。親の死ということも、経験する者が増えてくる世代でもある。僕の親父も、八年前に他界している。健在ではあっても、何らかの形で病気を併せ持ったり、手術をしたりというようなことが、親だけでなく自分のこととしても身に覚えのあるものが多くなる。

　同窓会でも、親の介護や、親の面倒をみる、というようなことが話題に上った。親と離れて暮らしている人は、意外に多いのである。うちには、僕の母親ではなく、僕の祖母が同居している。母親は近くに住んでいて、よく立ち寄るのだが、祖母の食事などを供すのは連れ合いである。親父が死んで、親父の兄弟である叔父さんたちが三人いるのだが、それぞれに遠くに住んでいる。どんな形にせよ、同居して生活の面倒をみる、ということは簡単なことではない。まして、昔ながらの性質を保つ老人たちは、一筋縄ではいかない。そういうことを日常的に経験していると、離れて住んでいる方々には、現場を見てください、という思いを禁じえない。そしてまた、現場に日常的にいる人間は、いろいろなことがありすぎて、多くのことは語らなくなっていくものでもある。言い訳をいちいちしたくないのである。理不尽なことでも、黙っていることが多くなる。それは、相手が対等の立場でなく老人であるということ、身内であるということ、そういうことが心にいろいろと作用するのであるからだ。

　もちろん、離れて住んでいる人にだって言い分はあるし、やさしい心の方もいっぱい知っている。それでも、あえて、現場にいる人は大変だ、と言いたい。それは、どんな世界も同じであろう。身内や家族となると、わがままを言えてしまう、そういうものだ。どんなにしょうもないひとでも、家族であればやはり家族なのである。それは、人間の背負った宿命であるかもしれない。

　人の面倒をみる、ということのほかに、自分の面倒をみる、ということもまた、この世代の重要なことである。体が思うように動かなくなってきたり、風邪をひいても治るのに時間がかかるようになったり、と年齢を感じるようになるのである。同窓会でも、検査でひっかかってポリープを除去した、という話はよく聞く。これからさらに衰えていく、ということが明白になる世代と言ってもいいかもしれない。先日も、地元の花火があり、地元の仲間と一杯やった。ほとんどつまみを食べずに飲んだのだけれど、二日酔いどころか、三日目になっても体の調子がおかしくて難儀したばかりだ。お酒を飲もうと思えば飲めてしまうところがまた足を引っ張るわけで、飲むことを自制するのは、何よりも自分のためになってくる。まあ、当たり前と言えば当たり前か。

　いろいろな悩みというものがあるのだけれど、僕個人のことを考えると、普段悩みを持っているとは思っていない。同窓会を機に、いろいろな人の話を聞くにつれ、世代共通の悩みのようなものを感じた。外に対して内面を吐露することも、ストレスをためない、という意味では意味のあることなのかもしれない。良い機会だったと思う。

2009年9月10日　寺田潤史

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