「現場で労働した人が報われる社会になってほしい」

　政権交代が実現した。民意の反映を謳う民主党の、いよいよ本分の表出の時が来た、と言うべきか。国民にお金が流れ、官僚主導のこの国の形を民意の反映である政治家主導の形に変える、大きな転換点になるかもしれない。国民の多くが思っていることだろう、やってもらいましょう、と。

　学校という仕組みの、一つの形、それがエリートたる官僚への道であろう。簡単にいえば、勉強のできる人、テストの点を多く取れる人が、最終的に官僚になることができる、という形か。それは、エリートであるがために挫折を知らない、あるいは挫折の少ない人が、挫折だらけの人の生活を、机の上から眺めて牛耳る仕組み、と言っていいだろう。エリートが官僚となり、官僚としてさらに上に登って行く人は、結果的に挫折の少ない人、という構図だ。

　庶民は、通常の感覚として、どれだけ挫折を経験してきたか、をもって人をみる傾向がある。挫折を知らない人は、一人前と見ないのである。挫折をしてはじめて、人の気持ちや痛みに心を馳せるきっかけを得る。失敗の積み重ねがヒットを生む原動力となる、イチロー選手と同じとは言えないが、イチロー選手をエリートと感じない人は多いと思う。官僚といったって、普通の人間であるはずだ。しかし、その世界の中にいると、どうしても甘い汁を吸いたくなるものなのだろう。そうでない人をそうでないままに育てるには、政治の仕組みを変える必要がある、ということかもしれない。

　エリートと呼ばれる人が集まっておいて、庶民の年金の記録を亡くしました、で済ませてしまう感覚がどうにも信じられないが、そういうことのできる人は、思いを馳せない人なのだろう。よく考えたなら、エリートは勉強のできる人であって、仕事のできる人とは違う。勉強のできる人は、要領のよい人であり、答えのある問題に対しての準備を周到に行うことのできる人のことでもある。しかし、庶民の暮らしは、いつも答えのない問題が山積みである。答えのない問題を得意とするのは、勉強のできる人ではなく、挫折を多く経験した人である。

　新しい総理大臣も、エリートたる家系の出身だが、長年のニュースを見る限りでは、野党の経験が長く、その間ずっと挫折のままだった、という見方もできなくはない。政治家はあくまで政治家だが、合法的に官僚の元に流れる仕組みのお金を庶民に配分することができるなら、これは痛快な政治家になる。それができるなら、やってもらいましょう、ということで、民主党に投票した人は多いだろう。

　農家の所得補償などという議論もあるが、それには期待していない。いつだって形を求めたならば、形にはまらないものが出てくるし、形にはまらない人は恩恵を受けにくいものだ。そんなことよりも、子供をたくさん産んだ家庭が報われる、現場で労働した人が報われる、長生きした人が「ラッキー」と思える、そういう社会にしなければ、地球自体が疲弊するばかりだ。人間はあくまで人間だが、やはり動物である。植物も動物も、みな子孫を残すために、懸命に生きている。そのことから外れてはいけない、と思うのだ。

2009年9月17日　寺田潤史

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る