「天候不順を味方につける」

　あまりに天気のことばかりを話題にして、農家の前途多難を強調したような文章が続いたかもしれない。地球の危機というのは大げさに過ぎるが、前代未聞の天候であることは事実だろう。世の中が、世界中が、昔ほど天変地異に左右されない時代なのか、右往左往する農林業者、それだけではないぞ、という気概を今こそ見せなければいけない。

　しばらくよいお天気が続き、暑さも戻ってきたところで、久しぶりの雨が降った。昨日の午後から今朝方まで、威勢よく雨は降った。９４ミリ！久しぶりの雨だから、そんなにダメージはない。ズッキーニの花の花粉を流されたくらいの被害である。それよりも、雨の直前に植え付けた葉ものにとって、最高の雨だった。しばらく晴れていたから、雨の直前までただひたすらに葉ものの植え付けを待つ日々だった。満を持して植え付けた。トレイ１６枚分。晴れが続いた後で、機械も使いやすい。植え付けを終わったところで、雨が降ってきた。ゴロゴロの土が、いっきに雨で湿り、苗の根は土に密着する。広いところに植えられて狂喜する苗が、畝に溢れていた。

　カラカラに乾いて、歩きやすかった畑が、雨でいっきにドロドロになる。もう半日雨が早ければ、機械植えできなかった。機械はもう、小屋の中に格納された。合羽を着て、長靴を履いた足に、泥がめいっぱい付着する。歩きにくい。今植えたばかりの葉ものの畝に、ネットをかぶせていく。これで、２週間もすれば、新しい葉ものが収穫できるだろう。

　今までなら、神様はやっぱりいてくれたんだなぁ、という思いが出てきただろう。今回は、ちょっと違う。地球のくしゃみか何か、それが人間のせいであったとしても、いつも天候不順に対して受け身に回っていた。今回は、何としてもこの雨に間に合わせよう、という執念のようなものがあった。いや、執念なら、いつも持ち合わせていた。違うのはどこか？何とか、この天候と次の雨を味方につけて生かすんだ、という執念があった。そのほかの仕事、たとえば、晩生の玉葱の草取りなど、ここでやらなければいつやる？というような仕事も並行して行ってきた。この雨の前の真打として登場するのが、葉ものの植え付けだった。気持ちの上でも、実際の行動でも、以前と比べての変化は、ほんの少しかもしれない。だけど、攻めの姿勢は、確実に増した。

　今、収穫中の葉ものよりも以前に植え付けた葉ものがある。サニーレタス、フリルレタスは、その時に植えたものだ。そのレタス類と一緒に植え付けた小松菜などの葉ものは、ほとんど収穫に至らなかった。全く不作だったのである。畑の場所もあるかもしれないが、度重なる豪雨も関係しているだろう。その時は、機械が入らない状態だったので、あきらめて手植えをした。何日もかかって、腰の痛いのを我慢しながら植え付けた。その労力の半分は実らなかったことになる。一方で、そこから数メートルしか離れていない、今小松菜などを収穫している場所に、機械植えした。そこは豊作だ。これは、いかに適期に植え付けることができるかどうかが、重要な意味を持つことを教えてくれる。天候を味方につけるということが、機械を利用できることと、適期に植え付けるということと密接に関連して、好結果を生みだすのだ。一年中、天候を味方につけることは至難の業だが、受け身とは違う攻めの姿勢を見せよう。

2010年5月20日　寺田潤史

　ひらく農園の畑で見つけました。カラスがヘビを見つけて、戦いを挑んでいます。ヘビは、カラスにかみつこうと抵抗しますが、カラスは執拗にヘビのしっぽをつつきます。もう一羽のカラスが、支柱の上で、見張り番をしていました。結果的に、カラスが勝ち、どこかへヘビを持っていったようです。

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