「手助けというエネルギー　その２」

　ようやく暑くなってきた。この地方の暑さとは、蒸し暑さそのものである。蒸し暑い季節には、蒸し暑いのがいい。それが季節というものである。しかしながら、人間にとっては、過ごしにくいことこの上ない。暑い中の農作業は、疲労を知らず知らずのうちに蓄積させる。暑い季節には、休養も大事なことだ。ところが、４年に一度のワールドカップサッカーが、夜には待っている。

　十代の頃からテレビでワールドカップサッカーを見ていた世代にとって、これは特別なことなのである。国と国との真剣勝負は、そのまま個と個の真剣勝負だ。日本も登場して一勝しているが、日本人ですらそれまでの試合とは違って、死に物狂いでサッカーをしていた。Ｊリーグだって、ここまで死に物狂いでサッカーをすれば、もっと見る人も増えるだろう。と、素人ながら感じてしまうほどに、最も興味深い真剣勝負の世界だ。練習試合に一喜一憂するのもいいが、本番の緊張感の中に自由を感じる選手は頼もしく映る。本番で１勝して評価ががらりと変わるのでは、メディアの視点がいかにいい加減なものであるかをさらけ出しているようなものだが、メディアの当事者たちは、過去の批判が間違ったものであったとしても反省などみじんもないように見える。信念なきジャーナリストに、物事を伝える資格はないと思うが、いかがなものだろう？

　脱線だ。話を元に戻すと、この蒸し暑い季節に、加熱したサッカーという戦いからエネルギーをもらう。人間のエネルギーというものは、仕事なら仕事だけをすることがエネルギーになるのではない。仕事に関係のないことがエネルギーとして仕事に好影響を及ぼす、そういうことは形として証明することはできないが、とても重要なことだ。多面性をもって、広く浅く、と勘違いする人もいるが、ある側面を深く追求すると、ほかの側面にも深く追求する姿勢は波及する。つまり、イメージが広がると、想像力は豊かになり、ついでに人の気持ちにもイメージを広げることができるようになる。このワールドカップサッカーの実況で、テレビ解説者が言っていた。 「日本は、複数の人がボールを取りに行くというような日本人らしい助け合いのサッカーをしたが、それが日本人には合っているのではないか？」 この言葉を聞いて、やはり苦労してきている人はイメージを広げて解釈できるな、と感じた。

　今週も助っ人が来た。先週来てくれたＹＴさんに加えて、Ｈさんも一緒にやってきてくれた。手助けのエネルギーは相乗効果となり、あっというまにオクラの畝がきれいに除草できた。Ｈさんは、畑という環境で話をすることでとても癒された、とのこと。畑という環境とＹＴさんの聴き上手が合わさって、Ｈさんにとっても手助けとなったらしい。仕事をしてもらって帰り際、納屋でコーヒータイム。恭さんのいつもの手作り焼き菓子もまた、人を癒すのかな？春先の低温であまり大きくならなかったトウモロコシを草取りの途中で生食してもらったり、そういうことができるのもこの環境ならではなのかもしれない。僕たちにとっては当たり前の環境が、ほかの人には違うイメージを駆り立てる環境になるのかな？それは、畑という環境に生命が満ち満ちているからだろう。多様な生命の混在が、人間がより人間らしくなれることにつながるのかな？とすれば、人間は多様な生命に助けられて生きていることになる。

2010年6月17日　寺田潤史

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