「夏休み２０１０　その２」

　もう八月が終わる。夏が終わるわけではなさそうだが、季節は秋を欲している。人間が秋を欲している、というべきか。この怒涛の残暑は、ここへきてちょっと暑さのほうが根負けしてきたような、秋の気配にはやはり負けてしまいそうな兆候が出始めた。ずっと２６度とか２７度を維持してきた最低気温が、今朝は久しぶりに２４度台を３時間もキープしてくれたのだ。それだけで、ぐっすり眠れた。

　朝の４時から６時の３時間、この時間だけが久しぶりの２４度台の気温だったのだが、一般の農家であれば、この時間に起きて働いているはずだ。一番涼しい時に働く、何とけなげな農家魂であろうか？僕は、この時間こそ、睡眠に充てる。だって、そうでしょう？毎日２６度以上のもやっとした湿度を帯びた空気の中にいなければいけないのに、本当にぐっすり眠れる時間に寝ておかなければ、とても持ちませんよ、からだが。と、いつも言い訳しているわけだが…。

　夏休み、よい言葉だと思う。夏は休まなければいけないんだ。休んでいいんだ。子供たちの夏休みは終わったけれど、彼らはずっとグータラしてきた。それでいいんだ。グータラ休むのが夏休みなんだから。ところが、それ何が欲しい、あれやりたい、これやりたい、あれ買って、これ買って、暇だ、などとたわけたことを言うから、あれせい、これせい、と言いたくなるのである。ただ、だまって休んでいればいいのにね。大人は、働いた。確かに、休みはなかった。それは、ほとんど収穫と出荷に追われ、野菜たちの水やりに追われた、それだけのことである。作付らしいことは何もしなかった。８月後半はさすがに、秋の準備にかかったけれど、それでもこの暑さでは、やたらと葉ものを植えつけるわけにもいかないのだから。働きながら休んだのだ。

　収穫と出荷と水やりだけだって大変なくらい、暑い。野菜は、えらい。井戸水さえ欠かさず流していれば、彼らは夏の子である。暑さにへばるのは、ピーマンの実くらいだ。ピーマンは、直射日光が強すぎると、樹に実がなっている状態で表面がやられてしまう。そのくらい、太陽光線が強いということだ。ほかの野菜は、へっちゃらだ。今日驚いたのは、いつだって元気なナスだが、収穫して、虫食いのナスをはねて、直射日光のあたる所に置いておいたら、２時間程度で、ナスの色が変わってしまったこと。ナスも、樹から切り取られ、この強烈な直射日光にやられたならすぐにお陀仏になってしまうのだ。

　胡瓜もえらい。今年の胡瓜は、何と最初に植えたものを今でも収穫しているのだ。何の変哲もない昔ながらの地這胡瓜。６月７日から収穫をしはじめて、いまだに収穫をしている。堆肥の追肥を２回してはいるが、井戸水だけで元気なのだ。全盛期のようにたくさん収穫できるわけではないが、井戸水さえ３日に一度程度出せば、そこそこ収穫できる。ここまで長い収穫期間は初めてのこと。ナスとキュウリのひなびた浅漬けの味は、この晩夏に実に味わい深い。

　夏休みに、しっかりと体を冷やしてくれる夏野菜が育つ。これらを食すこと、これが幸せというものか。夏に冬の野菜を欲することなかれ、医食同源、真土不二、そんな言葉を思い出す。人間の休んでいるうちに、夏野菜が元気、それが夏休み。

2010年8月26日　寺田潤史

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