業務日誌(2003年11月その2)

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11月19日 知財詐欺?

 ヤミ金押し貸しから端を発して架空請求、オレオレ詐欺、と詐欺ばっかり流行しているようですが、ついに知財と詐欺請求が結合してしまったのですかね?

 とあるNPOが、ある特許(特許番号3393199号:このページで「B」「3393199」で検索できる)をたてに、HP上で「サブウインドウを開くページは全部当団体の特許に抵触する」旨の主張をし、IBMのホームページ・ビルダーを名指しして「特許違反」と主張し、さらにいくつかのサイトの運営者に「ライセンス料(登録料と称している)を支払え」という旨の請求を送ったそうです。

 /.JAPANや、2ちゃんねる等でも大きな話題になり、どうやら非難が殺到したらしく、わずか2日後の本日午後に、当該ページはお詫びの文書に変わってしまいました。

 まあ、特許のクレームを素人目に読んだだけでも、すべてのサブウインドウを開く動作が含まれるような内容の特許にはなっていない(そのような内容だったらどう考えても新規性がなく特許は成立しなかったでしょう)わけで、はなから知財詐欺だったのではないかとしか思えないドタバタぶりです。

 それにしても成立した特許自体を見ても、保護すべきほどの技術の進歩性があるのかどうか疑わしい。ひょっとして、出願からの5年間(成立までに5年かかるというのは確かにIT関係の技術進歩のペースから見ると遅すぎる………)に陳腐化してしまったのかもしれませんが、審査官は何を考えていたのでしょうか。

 2003/11/26追記 私よりよっぽどうまく論評したコラムがここにありました。




11月17日 人間ドック

 本日は1年に一度の人間ドックに行ってきました。

 まあ30歳も半ばになると、身体のあちこちが完調というわけではなくなってきて、一応調べておくか、という気にはなってきます。

 とはいえ、この人間ドック、聴覚検査とか、肺活量検査とか面白いものも中にはあるのですが、何度やっても憂鬱になるのが眼底検査と胃のレントゲン。

 前者は片目ずつフラッシュを浴びせられて眼底写真を撮られるものですが、撮影後15分くらいは目の前に緑色の膜が掛かってしまって非常に気持ち悪いです。最初にやったときは、もう二度とまともに見えないんじゃないかと思いました。

 後者は言わずと知れたバリウムを飲む奴です。バリウムも、昔に比べりゃ相当飲みやすくなったようですが、それでも飲みたい代物ではないことは確か。バリウムの前に発泡剤を飲まされて、それでいながら「ゲップはするな」と脅され(?)、頭が上になったり下になったりする台の上で右向け左向け斜め45度で止めろと、レントゲン技師の方はたぶん我々を実験動物くらいにしか思っていないのではないかという扱いで、毎度悲しくなります(半分冗談)。

 でもって、バリウムを飲んだ日は、いつトイレに駆け込むかわからない状態ですので(失礼)午後も仕事は入れられず、久々に事務所の机にずっといた日でした。

 ま、本日の所は大きな所見もないようで一安心。




11月16日 訴訟費用の敗訴者負担問題

 本日の朝日新聞に、日弁連の敗訴者負担反対の広告が掲載されていました。

 我々弁護士が、一般の方から訴訟事件の依頼を受け、弁護士費用の説明をしたときに、よく聞かれるのが「で、訴訟に勝てば、弁護士費用は相手に請求できるのですよね?」という質問です。

 「いいえ、不法行為による損害賠償請求訴訟などの一部の裁判を除いては、弁護士費用は自己負担で相手に請求はできません」と説明すると、結構不思議そうな顔をされます。

 訴訟における弁護士費用を敗訴者側が相手の分まで負担するというこの制度、現在司法改革制度の中で、採用されるかの瀬戸際になっておりますが、一般の方の素朴な感覚から言うと「当たり前じゃないんですか?」という感じかも知れません。

 でも、先ほどのような質問をされる方でも、私が「では、万一この裁判に負けてしまったとき、相手の弁護士費用まで請求されてしまうとしたら、それでもいいですか?」と聞くと、「それはちょっと………」と言う方が多いのですね。

 そのような方が「わがままだ!」ということを言いたいのではありません。実際問題として、裁判には必ず勝つ側と負ける側がいます。勝つ側は弁護士費用まで取り返せて、それは結構なことでしょうが、負ける側はまさに「泣きっ面に蜂」状態です。

 負けるような事件を起こすからいけないのでしょうか?現実の紛争というものは、どちらかが100%理がなくて、どちらかが100%理があるような事件はほとんどありません。理の在処が偏っていても、せいぜい70対30です。

 さらに問題なのは、負けたら相手の弁護士費用まで負担せねばならないとなると、資力のない当事者は裁判を起こすことさえためらう可能性が大きくなるでしょう。このような萎縮効果を生む弊害は確実にあると思われます。ですから、濫訴が多すぎる、裁判の数を減らさなければならないから敗訴者負担制度を導入すべきだ、という議論なら当否はともかく筋は通っています。

 ところが不思議なことに、敗訴者負担制度は、司法に対する国民のアクセス障害をいかになくすかという「司法アクセス検討会」で検討されているそうです。

 しかもそこの議論の中には「例えば公害訴訟は連戦連勝なんだから敗訴者負担制度を適用しても訴訟提起を萎縮させることになどならない」といった意見も出ているそうですが、実態を無視した暴論であるとしか思えません。例えば「安中公害訴訟」は、一審判決まで10年かかり(この種の訴訟では、被害者側弁護団は手弁当同然で活動しています)、そうして出た判決も、請求額の5%を認容したに過ぎません。つまり、社会的には企業の責任が認められた時点で企業側の「敗訴」ですが、「敗訴者負担制度」の観点から言えば、企業側の95%勝訴であって、下手をすると企業側の弁護士費用の95%を被害者側に負担せよ、という判決が出されかねないのです。

 まあ、そんなわけで、一度でも裁判に関わった人で、企業、個人等いろいろな紛争当事者が存在することを前提に考える人であれば、「敗訴者負担制度」は望ましくない、と考えるはずなのですが………




11月12日 雑感(最近の私/選挙/丸紅事件)

 夜の会合続きでまたまた日が空いてしまいました。そこで、久々に複数話題。

(その1:最近の私)
 ここのところ何をやっているのかというと、

7日:高松で半日証人尋問。飛行機で移動するだけでも疲れるのに、移動先で4時間尋問すると本当に疲れる。。。

8日:「学校へ行こう」企画で、専修大学へ。使ったのは一番古くからあるシナリオで、これはもう資料がなくても私の頭にすべて入ってしまっているもの。ところが、今回またしても新しい観点からの指摘が高校生のアドリブ尋問から浮かび上がり、シナリオの奥の深さと高校生の潜在能力に感心。

9日:去年も書いた都水協の日本泳法競技会。油屋会が勝てる数少ない大会。私は今年も役員でこき使われた………。
 
10日:夜、同期の弁護士とかと飲み会。久々に会務に関係ない飲み。

11日:夜、法友全期の新人弁護士(56期、この10月に登録したばかり)に対して、何と私が保釈の講義。といってもそんなに語れるほどの経験があるわけではないのですが、準抗告で保釈却下をひっくり返したことが1回あるくらいです。

12日:やっと飲まずに帰れる!!!

(その2:選挙)
 総選挙。結果に関する評価は人それぞれでしょうが、私が一番納得いかないのはマスコミの出口調査。
 当日8時にすぐ「自民221、民主205」とか「219対208」とか報じておいて、実際には大はずれじゃないですか。なぜ自己批判しないのだ>マスコミ。ぬか喜びさせられた菅さんも、ぬか悲しみ(?)させられた安部幹事長もなぜ怒らん?

(その3:丸紅事件)
 もうタイムリーじゃないですが、丸紅ダイレクトの19,800円パソコン事件の件(本当は198,000円なのに、一桁打ち間違えて表示して売ってしまい、2チャンネルで大騒ぎになって注文が殺到した件ね)、結局あきらめて注文された分については本当に19,800円で売ることにしたそうですね。
 でも、法的にはどう考えたって、錯誤論で契約無効が主張できる場合なんですけどね。「19,800円」の新品パソコンなんて、現状ではあり得ないことは買う人もわかってるわけで、一桁間違えて表示している=錯誤に基づく売買の申込ということは言えると思うし。
 まあ、2チャンネル経由の小うるさい消費者相手に法律論を唱えてもクレームがうるさくなるだけ、という判断があったのでしょうが、消費者が怖いから主張もしないで引き下がる、という選択が本当によかったのかどうか。