業務日誌(2004年4月その1)

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4月14日 プチ日誌

 40000アクセス、ありがとうございます。帰国してから忙しく、なかなか日誌を書いている暇がありませんが、今後ともどうぞよろしく。

靖国判決を現職判事が批判小泉首相の靖国神社参拝を「違憲」と述べた福岡地裁の判決に対し、横浜地裁の現職裁判官が、15日発売の「週刊新潮」で、「主文に影響を及ぼさない憲法問題を理由欄にあえて書くのは『蛇足』というほかはない」と、痛烈な批判を浴びせている。

 ほーら、身内から矢が飛んできちゃった(4月8日の当職日誌を参照)。




4月12日 全期inグアム

全期旅行
 HP冒頭にも書いてあったとおり、9日から本日まで、2003年度法友全期会執行部の旅行に参加してきました。

 一年活動をともにしてきた仲間のはずですが、旅程をともにすると、改めて人の違う側面が発見できるのが面白いところで、今回も成田空港で「ドルへの両替」と言っているのに勝手に「ウォン」に両替されそうになる人(顔にある種の下心がにじみ出ている?)、短期間の滞在で2度もセスナの体験操縦に行ってしまう人(時節柄動機が怪しまれる?)、新婚の余韻醒めやらぬまま、今回をセカンドハネムーン兼用にする人(………)、と意外性満載でした。

 それはそうと、空港の警備がますます厳しくなったのは閉口。帰りにはトランクの中まで開けられました。アメリカは9月には入国者全員の指紋を取るそうで、そうなったらもはや個人的にはいかなるアメリカ出張・旅行もお断りしたい気分です。

 すっかり南国モードになったところで、帰ってからの仕事の波が悩ましいところです。





4月8日 「かけ逃げ」判決でいいのか


小泉首相の靖国参拝違憲判決判決の中で、亀川清長裁判長は、政教分離があいまいな日本の現状に強い懸念を表明。「違憲性を判断することを自らの責務と考えた」

 7日の福岡地裁判決。原告団やいわゆる「護憲」勢力は、判決を歓迎していますが、私は政治的立場はともかく、この判決の手法には「何だかなあ」という失望を禁じ得ません。

 この裁判は、原告らが小泉首相の憲法89条1項【政教分離原則】に違反した靖国神社参拝により、信教の自由を侵害されたことによる慰謝料の支払いを求める「国家賠償請求」という形式を取っています。

 なぜこのような請求形式かというと、現行憲法下では裁判所に対し、具体的権利義務関係に基づく請求を離れて、政府の行為が合憲か違憲かのみを判断させる「裸」の憲法判断を求めることはできないからです(具体的違憲審査制)。

 しかし、本判決は、結論としては「参拝によって原告らの利益は侵害されていない」として、請求を棄却しながら、理由中で「ただし、参拝行為自体は違憲」と注記しているものです。

 このように、判決論理上、あえて憲法判断に踏み込む必要性がないのに、あえて判断をした裁判所を「英断」とまで持ち上げる声もありますが、いかがなものでしょうか。案の定、政府からは、「結論は勝っている」とか、「不要な判断をした裁判所の方がおかしい」旨の批判を受けてしまいました。

 このように、結論としては請求を棄却しながら、理由中で、あえてリップサービス的に判断を示すやり方は、しばらく前の政教分離がらみの判決で始まり、強制連行事件等の判決でも使われたりしています。裁判所としては、結論までは動かしにくいけれど、何も答えないのはあまりにも不当である、という気分なのでしょう。

 しかし、極論してしまえば、このような判決は、裁判所が自らの本来の責務を放棄して自己満足に浸っているだけのようなものです。柔道で言えば、技の「かけ逃げ」のようなもので、繰り返せば反則でしょう。本当におかしいと思うなら、どうして正面から判決主文で認めないのか。裁判官が自分の信念を賭けて、一世一代の判決を書かないのか。あまりにも勇気のない態度ではないでしょうか。





4月6日 報酬規程の廃止

桜
 昨年7月8日の日誌で予告したとおり、4月1日付で、日弁連及び各弁護士会の弁護士報酬規程が廃止になりました。

 弁護士に先立ち、各士業もどんどん報酬規程が廃止され、報酬が「自由化」されていますが、その趣旨は、会による報酬の公定は競争の制限につながり、独禁法上好ましくないということのようです。

 ま、意味するところはわからんではないですが、例えば床屋さんの料金の自由化と異なり、一般市民に取っては一生に何度も利用するかどうかは不明である弁護士の料金が自由化されたところで、「料金を比べて選ぶ」だけの選択の場が生まれるかどうか、すなわち公正な競争が促進されるかどうかについてはかなり疑問です。

 実際、従前も、弁護士会の報酬基準というものは、ほとんどの弁護士にとっては「上限を画するもの」ではあっても、「下限を画するもの」ではありませんでした。少数の例外を除き、報酬基準を超える報酬を依頼者に持ちかけることは、弁護士にとってはかなり勇気の要ることでした。

 弁護士の側から見ると、基準がなくなることにより、全て自分で決めなければいけないことになります。

 とりあえず、私も新たな報酬基準を作成しました。これは実は、最近法友全期会の有志で編集した「弁護士報酬ハンドブック」上の案を下敷きにしたものですが、さらにいうと、この本の案自体も旧東弁報酬規程を下敷きにしています。長い歴史を経て出来上がってきた基準をそう無碍に無視はできないものです(と、いっても多少は変えた部分もありますが)。




4月3日 知財研修

 ついに東京地裁の知財部が、民事○○部から知財1部〜4部に名前が変わってしまうようですが、………知財がトレンドとはいえ、そこまでアピールせんでも。じゃあどうして労働1部とか、交通1部とか、破産1部という名前はできないのでしょうか?(専門部自体はあるが、名前は民事○○部のまま) 知財専門裁判所と作るという圧力に裁判所も相当びびったようです。

 焦ったのは弁護士会も同じで、知財専門代理人資格が創設されそうな議論にあわてて、泥縄で昨年から知財専門研修を、日弁連の肝いりで始めました。昨年の8月の第1回は、私はお馴染み水泳部の合宿で参加できませんでしたが、第2回目の今回、1日から3日まで、延べ8講座16時間の研修に参加してきました。

 さて、知財ブームに煽られているのは個々の弁護士も同じで、昨年の講座から大人気で日弁連のファクスがパンクしたとかしないとか。今回は日弁連が「混乱を避けるため」何と申込用の専用ファクス番号を設置し、申込開始日・開始時間を予告する(当然先着順)という徹底ぶり。ほとんどコンサートの予約です。東京会場だけで1000人くらい受講しているようですが、いきなりそんなに裾野が広がっても事件はあるのでしょうか(^^;

 そういう私も受講しているわけですが、現在受任中の商標権がらみの事件については今回の講座がかなり勉強になりました。